烈火の鬼神〜凍てつく人形の花嫁に愛をそそぐ〜

「凄いぞ真鈴。霊力が目覚めたぞ…!」

「これで伊澄家も安泰ね」

両親は真鈴の霊力の目覚めにとても喜び、すぐに霊力を制御する修行を始めた。まずは机の上に置かれた御札に霊力を込める修行を吉武と行う。

最初は低級の魔物に使う御札に霊力を込めるところから始める。

ー修行が始まって一時間が経過したが、御札には霊力が一度も込められなかった。真鈴はとても落ち込んだ。

バンっ!!

吉武が突然、机を強く叩いた。真知たちが振り向くとそこには眉間に皺を寄せて、怒りを露わにする吉武の姿があった。

「え…お父様?」

「真鈴、札に霊力を込められるまで休むことは許さないぞ」

困惑する二人は助けを求めようと文代の方を見た。しかし文代も吉武と同じように目を釣り上げて顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいた。

「お父様の言う通りよ。この程度のことができないなんて…恥を知りなさい。真鈴ができるようになるまで休憩は許しませんことよ。真知も姉ならしっかりしつけなさい」

真知たちは怒り狂う両親に反論ができなかった。まるで金縛りにあったかのように身動きが取れず、震えが止まらなかった。温厚な吉武と文代の初めて目にする姿に真知たち姉妹はまるで別人と居るような感覚だった。

「あ、あのお父様」

真知は震える声で吉武に霊力が目覚めたことを打ち明けようとした。

しかし…

「高い霊力があれば今の帝も敵ではない。いずれ伊澄家はその座を手に入れる。真知、お前の霊力が目覚め次第、真鈴と共に霊力の訓練を行う。もう、家族ごっこは終いだ。これからこの、伊澄吉武の忠実なる道具として一族に尽くすがいい」

この言葉で真知は確信した。父・吉武は真知たちを家族となんて一度も思っていなかった。ただ、帝の座に着くための道具でしかない。

真知と真鈴は吉武の姿が恐ろしかった。それをおかしいと思わず、横で高笑いする文代の姿も。

霊力のことは告げてはならない。何があっても真知は力を隠そうと誓った。しかしそれは同時に真鈴への裏切りとなり、何年も後悔と罪悪感にかられることになる。

そして一ヶ月が経った頃、真知は霊力をもたない無能と判断した吉武は真知を離に入れた。

「ごめんなさい、ごめんなさい…」

自分は妹を守れない臆病ものだ。真知は悔やんでも悔やみきれなかった。離で過ごすことになった初日は泣き叫びながら、眠りについた。

ーあれから十四年。

真知と真鈴は互いに顔を合わせることはほとんどなく、十九歳を迎えた。

魔物は年々、その力を増している。そのため、神具の消耗が激しく、伊澄家の祓い人や他の名家でも手に負えなくなっている状態だ。

名家という事もあり、討伐の成果が見られないと悪い噂が流れる。それが精神的負荷となって吉武は日に日に機嫌が悪くなっていった。そのため、屋敷内は常に緊迫した空気に包まれている状態となっている。