真鈴は伊澄家の信頼回復の為に屋敷へ戻ることを決断した。梢に療養を強いられたが、状況の悪化を早急に防ぐためにと無理を言って何とか承諾を得た。
真知も一緒に戻ろうとしていたが、真鈴以上に身体的にも、精神的にも疲労が溜まっているため療養に専念するように言われる。
昨夜、鬼神から求婚されたこともあり、心にモヤがかかった状態になっていた。今まで自分がどうしたいのか考えたことがなかったため、決断をくだすことは真知とって困難であった。
真知の心が決まらずにいると、そこへ鬼神が部屋にやってきた。
「失礼する」
「…鬼神様」
鬼神と目が合う真知だが、瞬時に逸らしてしまう。
(耳元にまだ声が残っていて、目を合わすのが気まずい。胸がギュッとなるわ。どうしてこんなに苦しいのかしら)
「お姉様、どうなされました?」
「もしや体調が悪いのでは」
「いいえ、なんでもございません…!」
慌てて誤魔化す真知だが、真鈴と梢の心配は増すばかり。顔を赤らめる姿を見て、やはり療養が必要だと2人は顔を合わせて同時に頷いた。
「そろそろ話を進めても良いだろうか?」
「…はっ!鬼神様。お待たせして申し訳ございません。今、お茶をお持ちします」
梢は部屋の端でお茶を入れ始める。鬼神はその場に座り、座卓を挟んだ向かいに真知と真鈴が座る。
「伊澄家の件、誠に残念であるが致し方ない。君たちがこれから安心して過ごせるよう、こちらも支援していく」
「こちらが不甲斐ないばかりに鬼神様には大変なご迷惑をお掛けします。伊澄家はこれから信頼回復に向けて精神していく所存でございます」
「必要なものがあればいつでも連絡してきて構わない。それから真知」
「はい」
名前を呼ばれただけで挙動不審になる真知。目を合わすのも必死だ。
「君はまだ療養が必要なのだろう。ならば我が屋敷で休養をすると良い」
「鬼神様のお屋敷ですか!?そんな、ご迷惑では…」
「迷惑など思っていない。それに昨夜のこと、まだ返事をもらってない。屋敷でじっくりと答えを出してほしい」
昨夜と聞くだけでドキッと胸が跳ね上がる。正直なところ体調はまだ万全な状態ではないため、伊澄家に戻ったところで真鈴の足手まといになるだけだ。
真知は十分に霊力を回復させるためには鬼神のもとで休養を取るしかなかった。
「君がすぐにでもと言うのなら、屋敷の者に祝言の準備をさせるが、どうする?」
面で顔を隠している鬼神だか、声はどこか楽しそうに真知をからかっている。知らずに真に受けている真知は真鈴の方を見て助けを求める眼差しを送った。
しかし、話の内容を聞いて鬼神は真知に気があるのだと勘づき静かにクスリと笑った。隅で聞いていた梢も察し、同じように笑みをこぼす。
「お姉様。これからの事は療養をしながらじっくりとお考えください。鬼神様のもとであればわたしも梢さんと安心して任せられます」
「ま、真鈴…」
「梢も賛成です。鬼神様、どうか真知様のことをよろしくお願いいたします」
梢は鬼神に頭を下げて真知のことを預けた。断る暇なく、真知は鬼神の屋敷で預かることが決定される。
強引に話を進めたのには理由があった。一つ目は真知の身体の療養。二つ目は心の療養だ。
長年、家族とは別の場所で暮らし、事あるごとに暴言を吐かれ、物理的にも虐げられてきた真知の心は崩壊寸前の状態だ。
今の状態で屋敷へ戻れば、苦しかった日々の記憶が蘇り、日常生活に支障が出るやもしれん。そうなれば伊澄家を支えることは不可能である。
一度蓋をしてしまった感情は簡単には開かず、こべりついた人形のように硬い表情を柔らかくするにも十分な療養が必要ようだ。だが、療養を得たところで、心の蓋は開くか否か…。
長年、虐げられてきた心の傷は誰もが考えているよりもずっと深い。吉武たちは真知の心に解かれるのが困難な呪いをかけていたのだ。
真知も一緒に戻ろうとしていたが、真鈴以上に身体的にも、精神的にも疲労が溜まっているため療養に専念するように言われる。
昨夜、鬼神から求婚されたこともあり、心にモヤがかかった状態になっていた。今まで自分がどうしたいのか考えたことがなかったため、決断をくだすことは真知とって困難であった。
真知の心が決まらずにいると、そこへ鬼神が部屋にやってきた。
「失礼する」
「…鬼神様」
鬼神と目が合う真知だが、瞬時に逸らしてしまう。
(耳元にまだ声が残っていて、目を合わすのが気まずい。胸がギュッとなるわ。どうしてこんなに苦しいのかしら)
「お姉様、どうなされました?」
「もしや体調が悪いのでは」
「いいえ、なんでもございません…!」
慌てて誤魔化す真知だが、真鈴と梢の心配は増すばかり。顔を赤らめる姿を見て、やはり療養が必要だと2人は顔を合わせて同時に頷いた。
「そろそろ話を進めても良いだろうか?」
「…はっ!鬼神様。お待たせして申し訳ございません。今、お茶をお持ちします」
梢は部屋の端でお茶を入れ始める。鬼神はその場に座り、座卓を挟んだ向かいに真知と真鈴が座る。
「伊澄家の件、誠に残念であるが致し方ない。君たちがこれから安心して過ごせるよう、こちらも支援していく」
「こちらが不甲斐ないばかりに鬼神様には大変なご迷惑をお掛けします。伊澄家はこれから信頼回復に向けて精神していく所存でございます」
「必要なものがあればいつでも連絡してきて構わない。それから真知」
「はい」
名前を呼ばれただけで挙動不審になる真知。目を合わすのも必死だ。
「君はまだ療養が必要なのだろう。ならば我が屋敷で休養をすると良い」
「鬼神様のお屋敷ですか!?そんな、ご迷惑では…」
「迷惑など思っていない。それに昨夜のこと、まだ返事をもらってない。屋敷でじっくりと答えを出してほしい」
昨夜と聞くだけでドキッと胸が跳ね上がる。正直なところ体調はまだ万全な状態ではないため、伊澄家に戻ったところで真鈴の足手まといになるだけだ。
真知は十分に霊力を回復させるためには鬼神のもとで休養を取るしかなかった。
「君がすぐにでもと言うのなら、屋敷の者に祝言の準備をさせるが、どうする?」
面で顔を隠している鬼神だか、声はどこか楽しそうに真知をからかっている。知らずに真に受けている真知は真鈴の方を見て助けを求める眼差しを送った。
しかし、話の内容を聞いて鬼神は真知に気があるのだと勘づき静かにクスリと笑った。隅で聞いていた梢も察し、同じように笑みをこぼす。
「お姉様。これからの事は療養をしながらじっくりとお考えください。鬼神様のもとであればわたしも梢さんと安心して任せられます」
「ま、真鈴…」
「梢も賛成です。鬼神様、どうか真知様のことをよろしくお願いいたします」
梢は鬼神に頭を下げて真知のことを預けた。断る暇なく、真知は鬼神の屋敷で預かることが決定される。
強引に話を進めたのには理由があった。一つ目は真知の身体の療養。二つ目は心の療養だ。
長年、家族とは別の場所で暮らし、事あるごとに暴言を吐かれ、物理的にも虐げられてきた真知の心は崩壊寸前の状態だ。
今の状態で屋敷へ戻れば、苦しかった日々の記憶が蘇り、日常生活に支障が出るやもしれん。そうなれば伊澄家を支えることは不可能である。
一度蓋をしてしまった感情は簡単には開かず、こべりついた人形のように硬い表情を柔らかくするにも十分な療養が必要ようだ。だが、療養を得たところで、心の蓋は開くか否か…。
長年、虐げられてきた心の傷は誰もが考えているよりもずっと深い。吉武たちは真知の心に解かれるのが困難な呪いをかけていたのだ。



