コトリカゴ

 昼休み。お昼ご飯を食べながら、智喜が教えてくれた。

 横井のじいちゃん。は、村に住んでいる人で、俺達2人が小さい頃は特に世話になった。
 悪いことをして叱られることもあったが、カブト虫を捕まえる為のトラップを教えてくれたり、釣った川魚を処理して、塩焼きにして食べさせてくれたりと、俺達の遊びに色を添えてくれた人だった。

 智喜の家の近所の人で、数ヶ月前から体を壊した、とは聞いていた。

 そんな横井のじいちゃんの容態が悪化したみたいで、もう危ないと、智喜の家に連絡があった、と言うのが昨日の話らしい。

「だからそのつもりで、心積もりだけはしてろよって親父から言われたよ」

 俺達の村は人が少ない分、誰かが亡くなった時、その家の近所の人が葬儀の準備を手伝うことになっている。昔からの風習みたいな、暗黙のルールみたいなものがあり、基本的に簡単な家族葬だけで済ませると言うケースはない。

「そっか。最近は全然会ってなかったから、顔を見に行ってみるよ」

「おぅ。きっとじいちゃんも喜ぶんじゃね?」

 そうだなと言おうとして、おーいと智喜を呼ぶ声が聞こえる。

「智喜ー! 今週は俺達が当番だぞ~!」

「あ、やべ。忘れてた」

 違うクラスのバスケ部の同級生の言葉に、智喜がハッと焦った顔になる。

「と言う訳で、俺は行くわ! じゃあな~」

「また明日。部活、頑張ってな」

 放課後。廊下まで出て、話の続きを喋っていた俺達はここで別れる。おぅと親指を立てたグッドサインで答えながら、智喜は部活に走っていった。

 ひとまず横井のじいちゃんのことは頭に留めておき、1階へ下りる。靴を履き替えて昇降口から出ずに、莎菜を待った。

 1年生から3年生が次々やって来る中に、莎菜の姿が現れる。クラスの友達と一緒にやって来て、俺の姿を見付けると、ひらひらと手を振った。

「じゃあまたね、莎菜」

「うん。バイバイ」

 ふたりの友達と別れて、こっちに駆け寄ってくる。

「お待たせ」

「ううん。じゃあ帰ろうか」

「うん」

 にこっと笑う莎菜を隣に、歩き出した。