コトリカゴ

 俺達は同じ高校に通っている。
 こんな不便な村だからこそ、同じ高校の方が都合がいい。と言うのは建前で、中学3年生から付き合い出したこともあって、同じ高校に通いたかった。
 とは言え建前も完全建前ではなく、本当に一緒の方が都合のいい部分もあった。

 まずこの村を出て隣町に行くのに、それなりの時間が掛かる。そこから電車に乗って高校に着くのに、1時間半程掛かった。

 朝はまだいいが、帰りに問題があった。それだけ時間が掛かるからこそ、授業が終わって村に着く頃には、夕方6時を回る。夏はまだ明るいが、冬になれば田舎は真っ暗闇だ。
 道中にある街灯は2本。そんな中を懐中電灯だけで帰るには、些かの怖さがある。
 また夜行性動物や害獣と遭遇する危険性もないとは言えないので、莎菜をひとりで帰らせたくなかった。

 そう言った点からも、同じ高校の方が良かった。仮に違う高校だったら、隣町の駅でどちらかが来るまで、待ちぼうけになっていただろう。

 すれ違う車もなく、一本道を走り村を出る。出てしばらくすると、徐々に景色が変わってくる。山がなくなり拓けた土地が出てきて、マンションや商業施設が立ち並ぶものになる。
 人の姿も多くなってきて、いつも利用する駅に着いた。駐輪場に自転車を止めて、それぞれの荷物を持ってホームに向かう。
 住む村とは比べ物にならない人の数の多さの中、電車に乗り込んだ。

 まず座れることはない。だから決まった車両に乗って、莎菜にドアの前に立ってもらう。何かあっても守れるように前に立ち、後は他愛ない会話をしながら電車に揺られて行く。

 ――村には人が少ないからこそ。それぞれの存在感があった。けれど都内に来てこの人の多さの中にいると、自分なんてちっぽけな存在だなと毎回思う。

 そうして30分程の電車と、15分程の徒歩で学校に着く。HRが始まる10分前に、莎菜のクラスの前で別れた。

「じゃあまた帰りに」

「うん。靴箱で待ってるね」

 ひらひらと手が振られると、莎菜ーと呼ぶ声が聞こえてくる。

「おはよー、莎菜」

「今日も彼氏と、ラブラブな登校してんねー」

「もう、そう言うこと言わないでよ」

 顔を赤くさせて、莎菜は茶化す友達の元に行く。教室の中に入っていくのを見届けてから、1組を離れた。

 2―3。教室の中に入り、自分の席に着く。椅子を引いた時、おーすとやって来たのは智喜(ともき)だった。