月日は経ち、三週間が過ぎ去った。
木々の葉を散らすように、冷たい木枯らしが吹きつける。
冬の訪れを感じながら、俺は響と加藤、早川と共に学校近くのスーパーを訪れた。
加藤がカートにカゴをセットし、その横で響が青果コーナーを指さした。
「リンゴは、あっちだね」
体育祭と中間試験が終われば、息を吐く暇もなく文化祭シーズン。俺たちのクラスはリンゴ飴の模擬店で、明日に向けて食材調達をしている。
もっとも、リンゴ以外の食材は準備万端。リンゴ自体もインターネットで小玉の五キロ入りを三箱購入していたのだが、手違いでリンゴが三個しか届かなかった。届いた時は『そんなことある!?』と皆の目が点になっていた。
これでは困ると、学校で模擬店の準備をするグループと、片っ端からスーパーを回るグループで手分けをすることになったのだ。
それにしても、何故このメンバーで行動を共にしているのか。それは、単純に修学旅行の班だから。初めこそ、響が買い出しに率先して手を上げたことによって、共に行きたいという者が多数出た。じゃんけんでメンバーを決めている間に、誰が提案したのか修学旅行メンバーで行動することに決まった。そもそも修学旅行の班は好きな者同士で組まれているので、不平不満を訴える者もいなかった。
それで問題自体ないのだが、俺たちのメンバーだけは寄せ集め。何となく、ぎこちなさを覚える。しかも、早川とは頭突きの一件もある。
ちなみに、あの後すぐに中間試験に入ったことや、更には学校は周りの目もあり、わざわざ苦言を呈するのは憚られた。故に、それっきりだ。
響と加藤がリンゴをカゴに入れる姿を一歩下がって見ていると、早川は隣のゴールドキウイを手に取って眺めていた。
「清水君、これくらいで良いかな?」
加藤の声で、響は手を止めた。
「だね。あんまり買いすぎても持てないもんね」
「先生と回ってる奴は良いよな。これ持たなくて良いんだもんな」
カゴいっぱいのリンゴの重さはどれくらいだろうか。四人で分担するにしても、それなりの重量だ。
しかし、学校から遠い店に買い出しに向かった時倉らのいるカースト上位メンバーの班は、担任の先生が車を出してくれることになったのだ。『全部そっちの班で回れば良いじゃん』と言いかけたが、そこはお口にチャック。余計な揉め事は好まない。
とはいえ、皆がいないところでは、文句の一つや二つ言っても問題ないだろう。
「しかも、アイツら何もしてないだろ。良いとこばっか持って行こうとしてさ。早川が描いてたリンゴの看板も、出来上がったくらいで横取りしてさ」
それに対し、レジに向かってカートを押す加藤も苦笑で同調した。
「そうだね。あれは、見てて僕もどうかなぁって思ったよ」
「だろ? 早川も何か言ってやれば良かったのに。妙な言いがかりつけられたら、俺が文句言ってやるし」
しかし、前髪で顔を隠して後ろを付いてくる早川は何も喋らない。それに対しても苛々していると、響があっけらかんとした態度で言った。
「看板の件は別にしても、僕は先生と狭い車の中で面談したくないよ」
「あー、確かに……」
そういう発想は無かった。今頃、将来のことや不安に思うことを無理やり聴取されているかもしれないと思うと、つい口角が上がる。
セルフレジでリンゴを別のカゴに移しながら数えていると、二十八個あった。響が封筒からお金を出して清算している間に、俺はそれを四つの袋に分割していく。
「ほら、早川も持てよ」
後ろで見ていた早川に、三つほど入ったビニール袋を手渡す。そして、響と加藤分の袋には五つずつ入れてやる。
「金さん、僕はもう少し持てるよ」
「金山君、僕も」
「俺、何もしてねぇから。荷物持ちくらいさせろ」
「何もって、金山君。僕らだって大して」
「リンゴ選別してカゴに入れてくれただろ? 俺、立ってただけだから」
それは今思い付いた口実だが、見るからに俺が一番デカい。均等に分けるのは逆にフェアじゃない。それに、残り十五個なら両手に分けて持てば、袋も破れないだろうし、なんて事はない。
「ほら、帰るぞ。足りなさそうなら、また買いに行かないとだし」
行きは後ろを歩いていた俺だが、帰りは前を歩く。自然と響が隣に来て、後ろを早川と加藤が並ぶ。
店外へと出ると、ヒュッと冷たい空気が顔に当たった。
暫しの沈黙の後、響が何気ない会話で静寂を破る。その内容としては、近所の犬の話や学食のおばちゃんの好物など心底どうでも良いものばかりだが、さすが響と言うべきか。後ろを振り返りながら加藤や早川にも意見を求める響は、自然と二人の気持ちも引き出している。
関心しながら、これなら修学旅行もこの四人で不都合はないだろう。そう思った時だった――。
「……うざい」
その声は小さすぎて、寒空に溶けるように消えた。
十五時という人通りも少ない時間帯に、バスがバス停に停車する。開いた扉からは、誰かが降りてくることも乗ることもない。そのまま何事もなかったようにバスが発車する。
歩いているのは、俺達四人と反対側の歩道に年配の女性、そして子連れのママさんが公園の入り口でお喋りをしているくらい。そこで聞こえた『……うざい』の声。聞き間違いだろうかと首を傾げていると、今度はハッキリと聞こえた。
「うざい。やめて」
それは、早川の口から発せられていた。
俺を含め、響や加藤も唖然とその場に立ち尽くす。
「は、早川。急にどうした?」
物静かな大人しめの人間を怒らせると怖いというあれだろうか。しかし、俺たちは何一つ怒らせるようなことはしていない。今だって、響がニャンコ動画について話していただけだ。
「ごめん、僕、怒らせた?」
響が困った顔で早川の顔を覗き込めば、凄い剣幕で捲し立てるように話し出した。
「いっつもいっつも、いい加減にして! 私に構わないで! 自分たちは人助けをしてるつもりだろうけど、こっちとしては良い迷惑だから! リンゴだって何これ。三つだけなら、鼻から私いらないじゃん。付いてきた意味ないし。てか、金山。清水と付き合ってるって本当は思われたくないんでしょ? それなのに、私のため? 思いあがるのも大概にして!」
自己主張をした早川には勿論驚きだが、俺や響のことを君付けで呼ばないことに更に驚きだ。
いや、呼び方はどうでも良い。肩で息をする早川は、何かに憑りつかれでもしたのだろうか。それくらい人格が変わっている。
おどおどしながら、早川の隣で加藤が口を開いた。
「えっと、早川さん? どうかしたの……?」
「加藤、あんたもあんたよ。長谷川達に良いように使われてさ」
「あ、それは、もう解決……」
言いかけた加藤を早川は前髪をかき上げて睨みつけた。
加藤の頬が赤く染まったのは、その顔がタイプだったからだろうか。そこは分からないが、黙った加藤を他所に、早川は響に向き直った。
「特にあんたよ。なんで邪魔すんの? この半年、私がどんな思いで弄られてたと思ってんの!? 途中からひょこっと来て、台無しにしないでよ!」
「おい、早川。響は何も」
「あんたは黙ってなさいよ。この悲劇の主人公ぶった陰キャ男子のくせに!」
殴って良いだろうか。このクソ生意気な小娘を殴っても良いだろうか。一発殴らないと気が済まない。そうだ、頭突きもされたし、よくよく考えると体育祭でぶつかったのも偶然ではないかもしれない。一発、いや、二発は殴っても罰は当たらないだろう。
呼吸を荒げていると、加藤が宥めるように背中をさすってきた。
「金山君、落ち着いて。落ち着いて」
「加藤、お前もムカつくだろ?」
「えっと……ハハハ」
「笑って誤魔化すな」
「……はい」
シュンとした加藤だが、流石に暴力はダメだと思ったのだろう。怒りを露わにした俺から離れない。対して、黙っている響は怒るでも笑うでもなく淡々と言った。
「早川さんってさ、普段どうして演技してるの? こっちが……ううん、本当は宇野さん達みたいに明るいキャラでしょ?」
「アイツらと一緒にしないで。私は、あんな奴らと一括りにされたくない!」
興奮が収まらない早川のことを響は何か知っているのだろうか。確かに、バイト先で見た姿や今の姿は学校とはまるで違う。だからと言って、学校での早川を全否定は出来ない。それなのに、響は演技と言い切った。
そんな響の胸ぐらを早川は両手でつかんだ。
「ちょ、お前、それは」
仲裁に入ろうとするが、両手に持っている袋が邪魔で割り込めない。加藤にそれらを託そうとまごまごしていると、早川の両の瞳から涙が溢れてきた。
「もう少しなの……もう少しで、アイツらに復讐出来るの」
(復讐……?)
これまで弄られていたことに対しての復讐だろうか。いや、先程からの発言からして、少し違う気がする。だったら何に対する復讐?
俺の疑問を何故か響が応えた。
「死んだ友達の為?」
「なんで、あんたがそれを……」
「八王子さんに聞いたんだ」
「誰だそれ?」
まずい、かなり核心に迫って深刻そうな雰囲気だったのに、思わず口を挟んでしまった。加藤がかつて見たことがない程に冷ややかな目で俺を見ている。
「わ、悪い。続けてくれ」
バツが悪そうに一歩下がれば、響がクスッと笑った。
「早川さんのバイト先のおばちゃんだよ。金さんもこの間会ったでしょ?」
「あー、あのおばちゃん。そんな洒落た苗字なのか」
いつの間に響がその八王子さんと仲良くしていたのかは後から聞くにして、どうやら早川は亡くなった友人の為に復讐をしようと目論んでいたようだ。
「つまり、アイツらが早川の友達を……?」
「そうよ。正確には宇野と時倉。小学生の頃、私の唯一無二の親友を虐めて、死に追いやったのがあの二人」
早川は掴んでいた響の襟を離して、諦めたように語り出したーー。
木々の葉を散らすように、冷たい木枯らしが吹きつける。
冬の訪れを感じながら、俺は響と加藤、早川と共に学校近くのスーパーを訪れた。
加藤がカートにカゴをセットし、その横で響が青果コーナーを指さした。
「リンゴは、あっちだね」
体育祭と中間試験が終われば、息を吐く暇もなく文化祭シーズン。俺たちのクラスはリンゴ飴の模擬店で、明日に向けて食材調達をしている。
もっとも、リンゴ以外の食材は準備万端。リンゴ自体もインターネットで小玉の五キロ入りを三箱購入していたのだが、手違いでリンゴが三個しか届かなかった。届いた時は『そんなことある!?』と皆の目が点になっていた。
これでは困ると、学校で模擬店の準備をするグループと、片っ端からスーパーを回るグループで手分けをすることになったのだ。
それにしても、何故このメンバーで行動を共にしているのか。それは、単純に修学旅行の班だから。初めこそ、響が買い出しに率先して手を上げたことによって、共に行きたいという者が多数出た。じゃんけんでメンバーを決めている間に、誰が提案したのか修学旅行メンバーで行動することに決まった。そもそも修学旅行の班は好きな者同士で組まれているので、不平不満を訴える者もいなかった。
それで問題自体ないのだが、俺たちのメンバーだけは寄せ集め。何となく、ぎこちなさを覚える。しかも、早川とは頭突きの一件もある。
ちなみに、あの後すぐに中間試験に入ったことや、更には学校は周りの目もあり、わざわざ苦言を呈するのは憚られた。故に、それっきりだ。
響と加藤がリンゴをカゴに入れる姿を一歩下がって見ていると、早川は隣のゴールドキウイを手に取って眺めていた。
「清水君、これくらいで良いかな?」
加藤の声で、響は手を止めた。
「だね。あんまり買いすぎても持てないもんね」
「先生と回ってる奴は良いよな。これ持たなくて良いんだもんな」
カゴいっぱいのリンゴの重さはどれくらいだろうか。四人で分担するにしても、それなりの重量だ。
しかし、学校から遠い店に買い出しに向かった時倉らのいるカースト上位メンバーの班は、担任の先生が車を出してくれることになったのだ。『全部そっちの班で回れば良いじゃん』と言いかけたが、そこはお口にチャック。余計な揉め事は好まない。
とはいえ、皆がいないところでは、文句の一つや二つ言っても問題ないだろう。
「しかも、アイツら何もしてないだろ。良いとこばっか持って行こうとしてさ。早川が描いてたリンゴの看板も、出来上がったくらいで横取りしてさ」
それに対し、レジに向かってカートを押す加藤も苦笑で同調した。
「そうだね。あれは、見てて僕もどうかなぁって思ったよ」
「だろ? 早川も何か言ってやれば良かったのに。妙な言いがかりつけられたら、俺が文句言ってやるし」
しかし、前髪で顔を隠して後ろを付いてくる早川は何も喋らない。それに対しても苛々していると、響があっけらかんとした態度で言った。
「看板の件は別にしても、僕は先生と狭い車の中で面談したくないよ」
「あー、確かに……」
そういう発想は無かった。今頃、将来のことや不安に思うことを無理やり聴取されているかもしれないと思うと、つい口角が上がる。
セルフレジでリンゴを別のカゴに移しながら数えていると、二十八個あった。響が封筒からお金を出して清算している間に、俺はそれを四つの袋に分割していく。
「ほら、早川も持てよ」
後ろで見ていた早川に、三つほど入ったビニール袋を手渡す。そして、響と加藤分の袋には五つずつ入れてやる。
「金さん、僕はもう少し持てるよ」
「金山君、僕も」
「俺、何もしてねぇから。荷物持ちくらいさせろ」
「何もって、金山君。僕らだって大して」
「リンゴ選別してカゴに入れてくれただろ? 俺、立ってただけだから」
それは今思い付いた口実だが、見るからに俺が一番デカい。均等に分けるのは逆にフェアじゃない。それに、残り十五個なら両手に分けて持てば、袋も破れないだろうし、なんて事はない。
「ほら、帰るぞ。足りなさそうなら、また買いに行かないとだし」
行きは後ろを歩いていた俺だが、帰りは前を歩く。自然と響が隣に来て、後ろを早川と加藤が並ぶ。
店外へと出ると、ヒュッと冷たい空気が顔に当たった。
暫しの沈黙の後、響が何気ない会話で静寂を破る。その内容としては、近所の犬の話や学食のおばちゃんの好物など心底どうでも良いものばかりだが、さすが響と言うべきか。後ろを振り返りながら加藤や早川にも意見を求める響は、自然と二人の気持ちも引き出している。
関心しながら、これなら修学旅行もこの四人で不都合はないだろう。そう思った時だった――。
「……うざい」
その声は小さすぎて、寒空に溶けるように消えた。
十五時という人通りも少ない時間帯に、バスがバス停に停車する。開いた扉からは、誰かが降りてくることも乗ることもない。そのまま何事もなかったようにバスが発車する。
歩いているのは、俺達四人と反対側の歩道に年配の女性、そして子連れのママさんが公園の入り口でお喋りをしているくらい。そこで聞こえた『……うざい』の声。聞き間違いだろうかと首を傾げていると、今度はハッキリと聞こえた。
「うざい。やめて」
それは、早川の口から発せられていた。
俺を含め、響や加藤も唖然とその場に立ち尽くす。
「は、早川。急にどうした?」
物静かな大人しめの人間を怒らせると怖いというあれだろうか。しかし、俺たちは何一つ怒らせるようなことはしていない。今だって、響がニャンコ動画について話していただけだ。
「ごめん、僕、怒らせた?」
響が困った顔で早川の顔を覗き込めば、凄い剣幕で捲し立てるように話し出した。
「いっつもいっつも、いい加減にして! 私に構わないで! 自分たちは人助けをしてるつもりだろうけど、こっちとしては良い迷惑だから! リンゴだって何これ。三つだけなら、鼻から私いらないじゃん。付いてきた意味ないし。てか、金山。清水と付き合ってるって本当は思われたくないんでしょ? それなのに、私のため? 思いあがるのも大概にして!」
自己主張をした早川には勿論驚きだが、俺や響のことを君付けで呼ばないことに更に驚きだ。
いや、呼び方はどうでも良い。肩で息をする早川は、何かに憑りつかれでもしたのだろうか。それくらい人格が変わっている。
おどおどしながら、早川の隣で加藤が口を開いた。
「えっと、早川さん? どうかしたの……?」
「加藤、あんたもあんたよ。長谷川達に良いように使われてさ」
「あ、それは、もう解決……」
言いかけた加藤を早川は前髪をかき上げて睨みつけた。
加藤の頬が赤く染まったのは、その顔がタイプだったからだろうか。そこは分からないが、黙った加藤を他所に、早川は響に向き直った。
「特にあんたよ。なんで邪魔すんの? この半年、私がどんな思いで弄られてたと思ってんの!? 途中からひょこっと来て、台無しにしないでよ!」
「おい、早川。響は何も」
「あんたは黙ってなさいよ。この悲劇の主人公ぶった陰キャ男子のくせに!」
殴って良いだろうか。このクソ生意気な小娘を殴っても良いだろうか。一発殴らないと気が済まない。そうだ、頭突きもされたし、よくよく考えると体育祭でぶつかったのも偶然ではないかもしれない。一発、いや、二発は殴っても罰は当たらないだろう。
呼吸を荒げていると、加藤が宥めるように背中をさすってきた。
「金山君、落ち着いて。落ち着いて」
「加藤、お前もムカつくだろ?」
「えっと……ハハハ」
「笑って誤魔化すな」
「……はい」
シュンとした加藤だが、流石に暴力はダメだと思ったのだろう。怒りを露わにした俺から離れない。対して、黙っている響は怒るでも笑うでもなく淡々と言った。
「早川さんってさ、普段どうして演技してるの? こっちが……ううん、本当は宇野さん達みたいに明るいキャラでしょ?」
「アイツらと一緒にしないで。私は、あんな奴らと一括りにされたくない!」
興奮が収まらない早川のことを響は何か知っているのだろうか。確かに、バイト先で見た姿や今の姿は学校とはまるで違う。だからと言って、学校での早川を全否定は出来ない。それなのに、響は演技と言い切った。
そんな響の胸ぐらを早川は両手でつかんだ。
「ちょ、お前、それは」
仲裁に入ろうとするが、両手に持っている袋が邪魔で割り込めない。加藤にそれらを託そうとまごまごしていると、早川の両の瞳から涙が溢れてきた。
「もう少しなの……もう少しで、アイツらに復讐出来るの」
(復讐……?)
これまで弄られていたことに対しての復讐だろうか。いや、先程からの発言からして、少し違う気がする。だったら何に対する復讐?
俺の疑問を何故か響が応えた。
「死んだ友達の為?」
「なんで、あんたがそれを……」
「八王子さんに聞いたんだ」
「誰だそれ?」
まずい、かなり核心に迫って深刻そうな雰囲気だったのに、思わず口を挟んでしまった。加藤がかつて見たことがない程に冷ややかな目で俺を見ている。
「わ、悪い。続けてくれ」
バツが悪そうに一歩下がれば、響がクスッと笑った。
「早川さんのバイト先のおばちゃんだよ。金さんもこの間会ったでしょ?」
「あー、あのおばちゃん。そんな洒落た苗字なのか」
いつの間に響がその八王子さんと仲良くしていたのかは後から聞くにして、どうやら早川は亡くなった友人の為に復讐をしようと目論んでいたようだ。
「つまり、アイツらが早川の友達を……?」
「そうよ。正確には宇野と時倉。小学生の頃、私の唯一無二の親友を虐めて、死に追いやったのがあの二人」
早川は掴んでいた響の襟を離して、諦めたように語り出したーー。



