誓詞~健やかなるときも病めるときも~

▼日記アプリ「にっきろぐ」より

・11月8日

 ふみ恵と付き合い始めてから丸2年が経った。今月下旬には、同棲生活も2年目に突入する。なんだかあっという間の日々だったなぁ。

 昼過ぎ、ふみ恵がディナーの仕込みに集中している間、隙をみて僕はこっそりと花屋へと向かった。
 お店の人におすすめを聞いたら、「あなたにはこれがぴったりね」とピンク色のスプレーマムという花をメインにバラ、かすみ草などを使った可愛らしい花束を作ってくれた。

 家の前でたまたまお隣のひとみさんと行き会って、少しだけ立ち話。記念日の祝いの言葉をかけてくれて、なんだか照れくさくなってしまった。

 お花は絶対に喜んでくれると太鼓判を押してもらったおかげで、渡す瞬間の緊張が幾分和らいだ。どれだけ時が経っても、贈りものをするときには喜んでくれるだろうかと、つい弱腰になってしまう。

 今書いていても、頬を膨らませながら待っていたふみ恵のことを思い出すと口元がゆるむ。

「もう、どこに行ってたの?」
「……ほら。これを、君にと思って」

 彼女の目の前に隠していた花束をバッと出した瞬間のあの見開いた瞳。

「わあ、とっても綺麗! ……まさか、これをくれるために?」

 頷いてみせた僕から両手で受け取ると、大事そうに抱えてとびきりの笑顔をくれた。

「嬉しい」
「テーブルに飾ったら華やぐかなと思って」

 なんてことない風を装ったけど、喜んでもらえてホッとしていた。あの笑顔が見られるなら、僕はなんだってできる気がするんだ。
 花束を解くのが勿体ないと、飾る前まで写真を撮りまくっていたのには笑った。

 ……とか言いつつ、僕は僕でふみ恵が気合いを入れて作ってくれた手料理の数々(それから苺がたっぷり乗ったショートケーキも!)が楽しみで、内心かなりはしゃいでいたのだけど。
 そわそわしながらテーブルセッティングをしていた自分を思い出して、あれは待ちきれない子供みたいだったなと今更恥ずかしくなってきた。笑

 日暮れ前から始めた少し早めのディナータイムは、最高のひとときだったなぁ。

 唯一の気がかりは、ふみ恵が今日プロポーズされるものだと思っていたんじゃないかという可能性についてだ。
 もう2年経つとなると、女性側もそろそろじゃないかと期待する頃なんじゃないかと思う。何もなかったと、がっかりさせていないといいんだけど……。

 もちろん、何も考えていないわけじゃない。記念日にしようかとも散々悩んだけど、今はホワイトデーにプロポーズをする計画を密かに立てている。
 もうすぐそこだから、あと少しだけ待っていてね。