▼ 日記アプリ「にっきろぐ」より
・4月4日
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▼音声ファイル【0404_1438.mp3】
(声量を絞っている。慌てていて早口)
――リアリティチェック。手汗がない……本当に夢の中だ。はぁ……やばい、ゆう君に言われるまで全く気がつかなかった。
文字を打っている暇がないので、備忘録として音声に残しておく。
さっきゆう君たちの家の方からものすごい音が聞こえてきて、すぐ玄関の前まで見に行った。今日はふみ恵とひとみさんのふたりで出かけているから、もしゆう君に何かあったら心配だなと思って。
予感は的中して、少し開いた玄関から倒れているゆう君の手が見えた。慌てて安否を確認しようと駆け寄ったら、いきなり足を掴んでくるんだもんな……あれにはまじでびっくりした。
でも、見たことのない顔つきで「でかい声を出すな」って言うもんだから、口に手を当ててなんとか堪えて。
ゆう君の両手が黒くて太い縄みたいなもので縛られていて、それに目が釘付けになっていたっていうのもあるけど……。
ひとまず、この状況を他の誰も知らないと知って安心したみたいだった。
とにかく「早く僕の家に連れて行け」と急かすからどうにかして連れ帰っだけど、太い縄はガチガチに締められていてとても解けそうになかった。……何でできてるんだあれ。
そうしてなんとかダイニングの椅子に座らせて、ひと息つく間もなくゆう君から頼みがあると言われた。そのとき、小さな声で呟いていたのが聞こえちゃって。
「戻れなかったらどうする……これ以上はやばいぞ、まじで」
確か、そんな感じのことを言ってたと思う。意味が分からなくて事情を聞こうとしたら、まさかいきなり殺しを頼まれるとは……。
あのときはもう本当に焦った。「ちょっと俺のこと殺してくれない?」なんて言い出すんだもんな。ちょっとそこまでお使い行ってきてみたいなノリで。
完全に頭がイカれてるって思った。でも顔を見たら冗談で言ってるわけじゃないって分かったし……だから余計に怖かった。
いやぁ、もうほんと……そばのキッチンカウンターに置いてあった包丁ホルダーから「これでいいや」って包丁を渡されそうになったときは、どうしようかと思った。
心臓をひと突きしてくれと言われて「そんなの無理だ」「さっさとやれよ」「だから無理だって!」と押し問答をしていたら、ゆう君がついにブチ切れて。
「夢をコントロールしてるのは俺のほうだ! お前みたいなモブが指図してんじゃねえよ!」
……すごい剣幕で怒鳴られて。そこで初めて「えっ、今この人夢って言った?」となったわけだけど。
ゆう君は明らかにマズったって顔してたな。でも僕が「君は明晰夢を見られる人なの?」と聞くと「えっ」ってすごく驚いていたから、ああそうなんだって確信した。
別の人間が共通の夢を見るだなんて聞いたことなかったけど、そんなこと有り得るのかな……。でも、実際に僕らはそういう状況に置かれたわけで。
ゆう君は「かなり興味深い事象だ」とか「俺が實の夢世界に迷い込んだ……?」とか色々と何か考え込んでいるようだった。正直僕には何がなんだかさっぱり……。
分かったことといえば、僕を夢の住人だと思ってのモブ発言だったということと、ゆう君が驚くほど明晰夢に関しての経験が豊富だったこと。
自分が夢の中にいることを自覚するだけに留まらず、意のままにシナリオやシチュエーションをコントロールできるらしい。
悪夢を見ても、最終的にはハッピーエンドに筋書きを変えることも可能だったとか。僕がいきたかった境地に既に達していて、素直に羨ましいのひと言に尽きる。
でももう、明晰夢で遊ぶのも潮時かもしれないって言ってた。今はもう悪夢ばかりで、コントロールできなくなってきているらしい。
僕に刺し殺せと言ってきた理由もそれにあったらしくて。よっぽどのショックを受けないと目を覚ましにくくなってるって。
何それ怖すぎん……? もしかして最近ゆう君のことを見かけなかったのはそのせいだったのかも。
でも痛いのは嫌じゃないのかと聞いたら、「は? 夢で死ぬとか有りえないし痛みを感じるわけがないって思ってるから、痛覚なんかねぇよ」と一蹴されちゃった。
悪夢の結末を余裕で変えられたのが段々とそれも難しくなってきて、それで使い始めたのが“視覚的ショックによる緊急離脱”なんだとか。初めのうちは手の平にちょこっとだけ傷を付けるだけとか、そういうのでも十分効果を発揮していたらしい。
けれど同じ方法を繰り返し使うことは、段々とそのシチュエーションをありありと想像できる状態になって、痛みを感じるようになるかもしれない危険が伴うと。
痛覚が生じることで負う精神的ダメージは計り知れないから、使えなくなったらまた新たなショック法を探してそれを実行する……そんな感じで、次第に行為のレベルがエスカレートしていったらしい。
それでシチュエーションのパターンを手を替え品を替えしないといけなくなって、ついには流血沙汰のような派手かつ自身にとってあり得ない事態を引き起こさないと目覚められなくなってしまったと。
……いや、でもさぁ。それで新たに考えついたのが僕に手伝わせるって、どんな発想? 夢の住人と思われてたし、ネタ切れだったことについてもなんとか理解はできるけど……夢の中とはいえ、本当にとんでもない話だよ。
僕の脱出方法について聞かれたので、「こないだ悪夢を見たときには、とにかく瞼を開けろって念じて無理やり現実世界でこじ開けた」と言ったら、「まぁそのくらいで目覚められるんなら大丈夫だろ」と言われた。
そもそも、僕は明晰夢を見られたこと自体ほとんどない。こないだの悪夢だって内容がエグすぎて夢と気づかざるを得なかった状況だったし……。
そのことを伝えたら、明晰夢経験者の先達としてゆう君から幾つかの忠告を受けた。
ひとつは、夢の住人にこれが夢であると告げないこと――それでゆう君は、僕に怒鳴ったときやっちまったって顔したんだなぁ。
なんか、夢世界の安定度が崩れるとかなんとか……。ゆう君って金髪だし遊んでそうな見た目してるけど、実はめちゃくちゃ頭がよくて難しいこと言うんだよなぁ。
それから、違和感を持ったらリアリティチェックを欠かさないこと。ゆう君が行っている方法は“鼻をつまむこと”らしい。夢の中だとつまんでも息ができるとかで。僕は手汗の有無で判断しているといったら普通に引かれた……。
けど、僕の五感の感じやすさには前のめりになってたな。見えて聞こえる、は結構あっても、感覚の数が増える毎に人数のパーセンテージはかなり下がるらしい。なかでも嗅覚はレアだと言っていた。僕はそのどれもがあるから……。
文字に異常がないからスマホやパソコンなども現実と遜色なく使えるといってスマホを見せると、もっと驚愕していた。「そんなの聞いたことがない、お前それを知られたら研究の検体待ったなしだぞ」って。
いやいや……そんなに? ゆう君には文字がボヤっとしたり謎の言語として見えていて、一切読めないみたいだった。
「お前が一番気を付けないといけないのはそこだな」
そう言われた。一番最悪なことは、現実と見まごうほど五感が鋭敏なのに、それを夢だと認識できないせいで悪夢を見たときに脱出ができないことだと。
前に見た公開処刑の夢がまさにそれだよな……。あまりにも異常すぎて夢だと気づけたから良かったけど、今回はゆう君がいなかったら気づいてすらいなかったと思うし。
触覚があるから痛みを感じてしまう可能性も高いので、ゆう君のような脱出法を使うのは諸刃の剣かもしれない。
逆を言えば「針で指をちくっとするだけでも脱出するには十分なショックかもな」と言っていたけど、ゆう君の例があるから他の方法で済むならまずそっちを優先するべきだろうとアドバイスしてくれた。
ゆう君の腕の縄を僕がコントロールすることでどうにか外せないかとイメージしてみたんだけど、だめだった……。
そもそもどうしてこんな状態になっているのかを聞くと、それこそ夢の住人にここが夢だと言ってしまったのを境に、世界の均衡が崩れて悪夢ばかり見るようになってしまったらしい。
この縄もひとみさんにやられたと言われてすごく驚いた。夢の中のひとみさんバイオレンスすぎるだろと思ったけど、自分も悪夢のときの異様な皆を思い出してウッとなった。
現実ではあんなにおっとり癒し系なひとみさんが、そんなドSと化してるとか怖すぎる……。しかも、そこで恐ろしいことに気付いちゃって。
ゆう君と僕の夢がどうしてかドッキングしてしまっているということは、その鬼と化したひとみさんのことを僕も目にする可能性があるってことじゃないか、と……。
「あいつはヤバい。均衡が崩れたのもひとみにバレてからなんだ」
そう言ったゆう君は顔面蒼白だった。
「えっ、それじゃそのひとみさんと出かけてる、夢の中のふみ恵もヤバくなってる可能性があるってことじゃん! 早く現実のふみ恵の元まで戻らないと……!」
そうなったら今度は僕のほうがパニックになっちゃって。お前は何を言ってるんだっていう目で見られたけど、仕方ないじゃないか! 僕にとっては死活問題なんだから!
僕とゆう君がこうなってるってことは、何かこのタウンハウスにというか、この辺りの地場に変な作用でもあるんだろうか? しょうやは大丈夫なのかな……と心配になった。
でもゆう君に「お前、さっきから何わけのわからないことばかり言ってるんだ」って怒られて。
まだ更に怒られそうな感じだったけど、何かの気配を察知したのか急に立ちあがって「お前の状態で人を刺すのは酷だろうから、もう俺は崖から飛び降りて脱出するわ。元気でな」なんて言い残して出て行っちゃった。
それがついさっきの話……。
はぁ……僕もふみ恵さんとひとみさんが帰ってくるまでに目を覚まさないといけない。起きたら、ゆう君も起きているのか見に行ってみよう。
頬を抓りながら瞼を開けるよう念じたらいけるかな。痛い……うう、ここは現実じゃない、夢の中だ……目を覚ませ……瞼を開けろ……。瞼を開けるんだ……瞼を――。
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(声量を絞っている。慌てていて早口)
――リアリティチェック。手汗がない……本当に夢の中だ。はぁ……やばい、ゆう君に言われるまで全く気がつかなかった。
文字を打っている暇がないので、備忘録として音声に残しておく。
さっきゆう君たちの家の方からものすごい音が聞こえてきて、すぐ玄関の前まで見に行った。今日はふみ恵とひとみさんのふたりで出かけているから、もしゆう君に何かあったら心配だなと思って。
予感は的中して、少し開いた玄関から倒れているゆう君の手が見えた。慌てて安否を確認しようと駆け寄ったら、いきなり足を掴んでくるんだもんな……あれにはまじでびっくりした。
でも、見たことのない顔つきで「でかい声を出すな」って言うもんだから、口に手を当ててなんとか堪えて。
ゆう君の両手が黒くて太い縄みたいなもので縛られていて、それに目が釘付けになっていたっていうのもあるけど……。
ひとまず、この状況を他の誰も知らないと知って安心したみたいだった。
とにかく「早く僕の家に連れて行け」と急かすからどうにかして連れ帰っだけど、太い縄はガチガチに締められていてとても解けそうになかった。……何でできてるんだあれ。
そうしてなんとかダイニングの椅子に座らせて、ひと息つく間もなくゆう君から頼みがあると言われた。そのとき、小さな声で呟いていたのが聞こえちゃって。
「戻れなかったらどうする……これ以上はやばいぞ、まじで」
確か、そんな感じのことを言ってたと思う。意味が分からなくて事情を聞こうとしたら、まさかいきなり殺しを頼まれるとは……。
あのときはもう本当に焦った。「ちょっと俺のこと殺してくれない?」なんて言い出すんだもんな。ちょっとそこまでお使い行ってきてみたいなノリで。
完全に頭がイカれてるって思った。でも顔を見たら冗談で言ってるわけじゃないって分かったし……だから余計に怖かった。
いやぁ、もうほんと……そばのキッチンカウンターに置いてあった包丁ホルダーから「これでいいや」って包丁を渡されそうになったときは、どうしようかと思った。
心臓をひと突きしてくれと言われて「そんなの無理だ」「さっさとやれよ」「だから無理だって!」と押し問答をしていたら、ゆう君がついにブチ切れて。
「夢をコントロールしてるのは俺のほうだ! お前みたいなモブが指図してんじゃねえよ!」
……すごい剣幕で怒鳴られて。そこで初めて「えっ、今この人夢って言った?」となったわけだけど。
ゆう君は明らかにマズったって顔してたな。でも僕が「君は明晰夢を見られる人なの?」と聞くと「えっ」ってすごく驚いていたから、ああそうなんだって確信した。
別の人間が共通の夢を見るだなんて聞いたことなかったけど、そんなこと有り得るのかな……。でも、実際に僕らはそういう状況に置かれたわけで。
ゆう君は「かなり興味深い事象だ」とか「俺が實の夢世界に迷い込んだ……?」とか色々と何か考え込んでいるようだった。正直僕には何がなんだかさっぱり……。
分かったことといえば、僕を夢の住人だと思ってのモブ発言だったということと、ゆう君が驚くほど明晰夢に関しての経験が豊富だったこと。
自分が夢の中にいることを自覚するだけに留まらず、意のままにシナリオやシチュエーションをコントロールできるらしい。
悪夢を見ても、最終的にはハッピーエンドに筋書きを変えることも可能だったとか。僕がいきたかった境地に既に達していて、素直に羨ましいのひと言に尽きる。
でももう、明晰夢で遊ぶのも潮時かもしれないって言ってた。今はもう悪夢ばかりで、コントロールできなくなってきているらしい。
僕に刺し殺せと言ってきた理由もそれにあったらしくて。よっぽどのショックを受けないと目を覚ましにくくなってるって。
何それ怖すぎん……? もしかして最近ゆう君のことを見かけなかったのはそのせいだったのかも。
でも痛いのは嫌じゃないのかと聞いたら、「は? 夢で死ぬとか有りえないし痛みを感じるわけがないって思ってるから、痛覚なんかねぇよ」と一蹴されちゃった。
悪夢の結末を余裕で変えられたのが段々とそれも難しくなってきて、それで使い始めたのが“視覚的ショックによる緊急離脱”なんだとか。初めのうちは手の平にちょこっとだけ傷を付けるだけとか、そういうのでも十分効果を発揮していたらしい。
けれど同じ方法を繰り返し使うことは、段々とそのシチュエーションをありありと想像できる状態になって、痛みを感じるようになるかもしれない危険が伴うと。
痛覚が生じることで負う精神的ダメージは計り知れないから、使えなくなったらまた新たなショック法を探してそれを実行する……そんな感じで、次第に行為のレベルがエスカレートしていったらしい。
それでシチュエーションのパターンを手を替え品を替えしないといけなくなって、ついには流血沙汰のような派手かつ自身にとってあり得ない事態を引き起こさないと目覚められなくなってしまったと。
……いや、でもさぁ。それで新たに考えついたのが僕に手伝わせるって、どんな発想? 夢の住人と思われてたし、ネタ切れだったことについてもなんとか理解はできるけど……夢の中とはいえ、本当にとんでもない話だよ。
僕の脱出方法について聞かれたので、「こないだ悪夢を見たときには、とにかく瞼を開けろって念じて無理やり現実世界でこじ開けた」と言ったら、「まぁそのくらいで目覚められるんなら大丈夫だろ」と言われた。
そもそも、僕は明晰夢を見られたこと自体ほとんどない。こないだの悪夢だって内容がエグすぎて夢と気づかざるを得なかった状況だったし……。
そのことを伝えたら、明晰夢経験者の先達としてゆう君から幾つかの忠告を受けた。
ひとつは、夢の住人にこれが夢であると告げないこと――それでゆう君は、僕に怒鳴ったときやっちまったって顔したんだなぁ。
なんか、夢世界の安定度が崩れるとかなんとか……。ゆう君って金髪だし遊んでそうな見た目してるけど、実はめちゃくちゃ頭がよくて難しいこと言うんだよなぁ。
それから、違和感を持ったらリアリティチェックを欠かさないこと。ゆう君が行っている方法は“鼻をつまむこと”らしい。夢の中だとつまんでも息ができるとかで。僕は手汗の有無で判断しているといったら普通に引かれた……。
けど、僕の五感の感じやすさには前のめりになってたな。見えて聞こえる、は結構あっても、感覚の数が増える毎に人数のパーセンテージはかなり下がるらしい。なかでも嗅覚はレアだと言っていた。僕はそのどれもがあるから……。
文字に異常がないからスマホやパソコンなども現実と遜色なく使えるといってスマホを見せると、もっと驚愕していた。「そんなの聞いたことがない、お前それを知られたら研究の検体待ったなしだぞ」って。
いやいや……そんなに? ゆう君には文字がボヤっとしたり謎の言語として見えていて、一切読めないみたいだった。
「お前が一番気を付けないといけないのはそこだな」
そう言われた。一番最悪なことは、現実と見まごうほど五感が鋭敏なのに、それを夢だと認識できないせいで悪夢を見たときに脱出ができないことだと。
前に見た公開処刑の夢がまさにそれだよな……。あまりにも異常すぎて夢だと気づけたから良かったけど、今回はゆう君がいなかったら気づいてすらいなかったと思うし。
触覚があるから痛みを感じてしまう可能性も高いので、ゆう君のような脱出法を使うのは諸刃の剣かもしれない。
逆を言えば「針で指をちくっとするだけでも脱出するには十分なショックかもな」と言っていたけど、ゆう君の例があるから他の方法で済むならまずそっちを優先するべきだろうとアドバイスしてくれた。
ゆう君の腕の縄を僕がコントロールすることでどうにか外せないかとイメージしてみたんだけど、だめだった……。
そもそもどうしてこんな状態になっているのかを聞くと、それこそ夢の住人にここが夢だと言ってしまったのを境に、世界の均衡が崩れて悪夢ばかり見るようになってしまったらしい。
この縄もひとみさんにやられたと言われてすごく驚いた。夢の中のひとみさんバイオレンスすぎるだろと思ったけど、自分も悪夢のときの異様な皆を思い出してウッとなった。
現実ではあんなにおっとり癒し系なひとみさんが、そんなドSと化してるとか怖すぎる……。しかも、そこで恐ろしいことに気付いちゃって。
ゆう君と僕の夢がどうしてかドッキングしてしまっているということは、その鬼と化したひとみさんのことを僕も目にする可能性があるってことじゃないか、と……。
「あいつはヤバい。均衡が崩れたのもひとみにバレてからなんだ」
そう言ったゆう君は顔面蒼白だった。
「えっ、それじゃそのひとみさんと出かけてる、夢の中のふみ恵もヤバくなってる可能性があるってことじゃん! 早く現実のふみ恵の元まで戻らないと……!」
そうなったら今度は僕のほうがパニックになっちゃって。お前は何を言ってるんだっていう目で見られたけど、仕方ないじゃないか! 僕にとっては死活問題なんだから!
僕とゆう君がこうなってるってことは、何かこのタウンハウスにというか、この辺りの地場に変な作用でもあるんだろうか? しょうやは大丈夫なのかな……と心配になった。
でもゆう君に「お前、さっきから何わけのわからないことばかり言ってるんだ」って怒られて。
まだ更に怒られそうな感じだったけど、何かの気配を察知したのか急に立ちあがって「お前の状態で人を刺すのは酷だろうから、もう俺は崖から飛び降りて脱出するわ。元気でな」なんて言い残して出て行っちゃった。
それがついさっきの話……。
はぁ……僕もふみ恵さんとひとみさんが帰ってくるまでに目を覚まさないといけない。起きたら、ゆう君も起きているのか見に行ってみよう。
頬を抓りながら瞼を開けるよう念じたらいけるかな。痛い……うう、ここは現実じゃない、夢の中だ……目を覚ませ……瞼を開けろ……。瞼を開けるんだ……瞼を――。
