誓詞~健やかなるときも病めるときも~

「うわぁあああっ!」
「きゃっ!」

 ――どたんっ。

「いっ……つつつ」

 勢いよく飛び起きた反動でソファから転げ落ち、ローテーブルに思い切り肩をぶつけた。

「實さん? だ、大丈夫?」
「はぁっはぁっ、ふみ恵! こ、ここは――」

 ふみ恵はしきりに辺りを見回す僕を心配そうに見ながら、ぶつけたところをさすって確認している。

「やだ、寝ぼけてる。思い切りぶつけちゃって……痛かったでしょ」
「え? あ、うん痛い……ちゃんと痛い。そうだ手の平!」

 じっとりと湿っている。……ということは、現実に戻ってこられたってこと?

「やった……! よかった……本当によかった!」
「良いわけないでしょ!」

 こてっ、と勢いゼロの優しいげんこつが頭に振りおろされた。

「もう、實さんずっとうなされてたんだよ。揺さぶっても目を覚まさないし、覚めたと思ったらこれだし……わたしの膝枕、そんなに寝心地悪い?」

 しょんぼりした顔で言われて盛大に慌てた。膝枕をしておいてもらいながら何たる失態。

「いやっ寝心地悪くなんかないよ! むしろ最高! ほ、ほら。最近あんまり寝られてない影響で悪夢を見やすいみたいで……だからふみ恵が悪いとかじゃないんだ。うん、もう全然全くこれっぽちも!」

 矢継ぎ早にフォローの言葉を並べ立てると、上目遣いで「本当?」と遠慮がちに聞いてきた。ぐっ……可愛い。

「起こしてくれて良かったよ……ほんとに」
「え、どんな夢を見てたの?」
「いや、聞かない方がいいと思うよ……」

 あんな内容とても聞かせるわけにはいかない。明後日の方向を見る僕に、ふみ恵は不満げな声をあげた。

「あっ! ていうか實さん、寝癖を直してきて! もうあと30分もしたら家でないとだよ。今日は衣装合わせの日なんだから!」
「わっ、そうだったごめん! 寝癖どこ、ここ?」
「そこじゃなくて――」

 ドタドタと慌ただしく支度を始める。いつもの日常が戻ってきたことに心から安堵した。夢で良かった、本当に。

 ――ああ。といいうことはでも、美香が来るかもしれないことは、変わりないのか。