誓詞~健やかなるときも病めるときも~

▼音声ファイル【0328_1758.mp3】

(始終雑音交じり。声量を絞っている)

 はぁっはぁっはぁっ。なに……なん……何あれ何あれ何あれ! 美香がっ、美香が……! うっ、おえぇえっ……ぐう、うえ……はぁはぁ。お、落ち着け……ふうう……ふううう。落ち着くんだ……いや、あんなの見たら無理だろっ無理だ!

 昨日っ、逮捕されて。それで終わったと思ってた。もう生活を脅かさなければもうなんだっていいって、そう思ってた。でも、でも死ねばいいなんて思ったことなんか一度もない……!

 アナウンスが、町内放送みたいなやつが流れてきて。公開処刑のお時間です、って。

 初めは、まさかそんな見世物みたいに晒されるだなんてと思った。恥をかかせるという意味での公開処刑だとばかり……。でも、あっあんな、あんなももっも文字通りの公開処刑をするなんて……ううっ、うっ。

 はぁはぁ、大きな噴水のある、あの広い公園……。その噴水の真ん前に木製の特設台が組まれてた。ここは閑静な住宅街のはずなのに、あれだけの見物人、一体どこからわいて出てきた?

 おかしいよ……。でも一番おかしいのは、誰もそれをおかしいと思わないことだ……! ふみ恵もっ、しづえさんもしょうやもひとみさんも、警察の人まで! 皆みんな、普通のことみたいに「ああ良かったこれで安心だね」って言ってくる!

 かっ、釜茹でってなんだよ! 僕は、僕は何もできなかった! ただ見ていることしか……!
 直接被害を被った人間として、僕はふみ恵と一緒に最前列で見ることになって、それで……。

 皆は今頃……食べてるんだと思う。美香を煮込んだアレを……うぐ、っ……。

 もしふみ恵が「實さんがあの子を取り込むのは嫌」と言っていなかったら、僕が、僕がひとくち目を食べさせられるところだった。

 でも、あああれは僕を庇おうとして言ったんじゃない。本当にっ、言葉通りの「美香という栄養を僕の血肉にしたくない」という意味で放った言葉だった!

 ああっ、嫌だ嫌だ嫌だ……! 美香の断末魔と嗅いだことのない臭いが鼻腔にこびり付いて取れない! これは……こんなこと、ありえない。
あっていいはずがないんだ。ハハ……こんなの悪夢に違いな……ひゅっ。

 そうだ、ゆ夢……夢だ! はぁはぁ、リアリティチェック……はぁはぁ……左手、湿ってない! さらさらだ! っくうう、うううぁあああよかったあぁあ! そうだよな、夢だこんなの、よし、よし、どうにかして目覚めないと……はぁはぁ……。あ……でも、どうやって?

 ああっ、脱出する方法は覚えてない! どうしようどうしようどうしよう。はぁはぁ……よよし、目を、目を覚ますんだ……うん、念じるんだ。落ち着け、瞼を開けるんだ……瞼を……ふうう……ふうう…………。