椎名くんは笑わない(完結)


 
 
 このお話は、『椎名くんは変わらない』の椎名くん目線による裏ストーリーです。
 水族館デート中の彼の心境を綴ったものです。
 最後まで読んでくださった方へのお礼です。どうぞお納めください。


 ◇


 初めて会った時の藤川は、クールで恐そうなイメージだった。
 女子同士でつるむこともなく、恋バナにも興味なさそうなサバ系女。
 よく見たら、目がちょっと吊り目なんだよな。可愛いっていうよりかっこいい顔立ちだと思う。
 だけど話してみたらめっちゃ気さくだし、意外とよく笑う。俺のボケにも即気づいて光の速さでツッコんでくるし。
 誰といるよりも居心地がいいと感じるまで、時間はかからなかった。

 ある日曜日、気分転換にオシャレして出かけたら、本屋でバッタリ藤川に会った。
 向こうもなんだかいつもと違って、フェミニンなスカート履いてた。こういう服も着たりするんだ? 何となく、藤川は休日パンツスタイルで過ごしているものだとばかり思い込んでた。

 ちょっと話したら、向こうもたまたまオシャレしたい気分だったとか。
 俺たちは気が合う。

 その場で別れたけど、もう少し一緒にいたかったなって思った。後悔していた矢先、また会った。今度は美容院で、お互いシャンプー台の上。どんな再会?
 そりゃ運命感じる。

「なになに、友達? 彼女?」
 美容師さんに聞かれて。
「うーん。ただの同級生っすね」
「残念。カップルだったらカップル割でさらに5%オフだったんだけどな」

 カップルになりたいと思ったのはそれがきっかけだったかも。
 だけど本当はずっと思ってた。

「藤川好きだ! 俺と付き合ってくれ!」
 
 藤川は呆れながら笑って「ああ、はい。じゃあ一応」って。
 とことんクールな奴だ。
 絶対冗談だと思ってるんだろ。
 そう思ったら、悔しくて。

 こいつと絶対付き合ってやると思った。

 本当は藤川だって、俺のこと好きだと思うんだ。って、こんなこと言ったら怒られそうだけど、証拠だったら幾つも思いつくんだよ。

 映画に誘ったらオッケーされたし、オトコの()になった俺のダチと偶然会ったら元カノと勘違いして睨んでたし、雨が降り出す中でひとりぼっちにさせたら泣きそうだったし。

 可愛いと思ったことないって言ったら本気でキレてたろ。だからって、彼女もちの男の傘に入って行こうとすんな。マジで焦った。

 水族館? オオメンダコ?
 興味ねーわそんなもん。
 いい加減気づけ。いつまでそんな暗い顔してんだ。


 お前のことが好きなんだよ。藤川。


 もう隠しきれないのがちょっと残念。
 お前のジレジレした顔が好きだった。
 恋する乙女って感じで、めちゃくちゃ可愛かったから。

 だけど。


「これからもよろしくな、藤川」
「こちらこそ。よろしくお願いします、椎名くん」


 俺と両想いになった藤川も、きっと可愛いと思うんだよ。
 今度はそういう顔も見たいから、

 恋人繋ぎで一緒に歩こう。


 END