真っ白なガーベラのような君へ

①ボウルに卵を割り入れる。
 
 僕は初めて卵を持った。大げさではなくこれは結構マジな話だ。
 納豆も卵は使わないし、卵かけご飯も親が食べるついでに一緒に割ってもらっていた。
「卵の持ち方って、こうで合ってる?」
 不安になりながら、中指に卵のパックの上になっている部分が触れるように持ってみる。
「うん。合ってる。割るときは、平らなところで軽く叩けばヒビが入るから」
 そう言われて、まな板の角に打ち付ける予定だった進路を変更して、まな板の上に二度、軽く卵を打ち付ける。
 真ん中が丸くひび割れた。
「ここに両手の親指を入れて、左右に開くと割れるから」
 そう、ヒビの入った部分を指差す。いまいちよくわからない、と首をかしげると、実際にやって見せてくれた。
 コンコン、と鈍い音がしたかと思うと、ヒビの入ったところに両手の親指を押し込む。そこから左右に開くと、カパッと殻が開けて生卵がボウルに着地した。
「意外と簡単だよ?」
 咲結さんがやると、本当に簡単そうに見える。
 見よう見まねでやってみると、力加減を間違えたのか、殻も一緒に入ってしまった。
「うわ、殻入った」
 わかりやすく絶望すると、咲結さんが指を水で濡らすように言った。
 疑問に思いながらも、言われるがまま人差し指を水で濡らす。
「濡らした指、一点集中でその殻に押し当てて」
 ふざけて言っているのかと思ったが、そんなことなさそうだ。
 言われた通りに、人差し指を殻に押し当てて引き上げる。
「うわ、すご。一発で取れた」
 卵の中に入った殻は取るのに苦戦する、というのはよく聞く話で、僕の母親も殻が入ると必死に指で追いかけっこをしていたのに。
「すごいでしょ。こないだテレビでやってたんだ」
 咲結さんは自慢げに、そう言った。