真っ白なガーベラのような君へ

 冬がやってきた。街はクリスマス一色になり、カフェのメニューも、温かいものがたくさん並んでいた。
「冬季に入ったばっかりで申し訳ないんだけど、早速レシピの伝授をしてもいいかな」
 あの日。咲結さんを学校まで迎えに行った日。
 その時の衝撃が、未だに僕の中に住み続けているのに。咲結さんはあっけらかんとした顔で今日も働いていた。何も知らなかったあの日が、平行線で続いているのに、僕はまっすぐ咲結さんを見ることができなくなっていた。
 罪悪感なのか、会話に困るからなのか。
 あの日のことには一切触れずに、時間だけが過ぎていく。
「おーい、優緋くん? 体調悪い?」
 僕の顔を覗き込む咲結さんの頬は、じんわり赤くて。
 そういえば、前も頬を赤くして戻ってきた姿を見たな、と思った。
 そして、それは確かに。彼女を保健室でいじめていたであろう女子生徒が、ここに来たときのことだった。
「大丈夫?」
「あ、ああ、うん。ごめん」
 僕が反応すると、咲結さんはノートを手渡した。
「ねえ、これ、一人で作れる?」
 シチューのレシピが書かれたページ。
 今までの経験があれば、何となくできるような気はした。
「うん、多分……」
「わかんなかったら、呼んでくれればいいから。私、ホールの仕事してくるね」
 キッチンに僕を置いて、ホールで接客を始める。
 本格的に一要因としてカウントされたのだろう。
 その事実が嬉しくて、ノートを読むのもいつにも増してわくわくする。