③冷蔵庫に入れていた卵白の中に、二十五グラムのグラニュー糖の三分の一(八グラム程度)を加えて混ぜる。全体が白っぽくなってきたら、残りのグラニュー糖の半分を、メレンゲになったら残りすべてのグラニュー糖を加えて、しっかり泡立てる。
「さあ、全力で混ぜるのはこれが最後だよ。頑張ろう!」
咲結さんが冷蔵庫から卵白の入ったボウルを取り出す。
「これ、実際一人だと何分くらいでやるの?」
会話をしながら、普段使わないような筋肉を使って疲れ切った腕を小刻みに揺らして少しでも腕の疲れを落とす。
「三十分ちょっとくらいかな。優緋くんも続けたらできるようになるよ」
「三十分って、マジで?」
「マジマジ。ほら、急がないと。いくら氷水に浸してるからって、生クリームが溶けちゃうよ」
それは嫌だ。
もう始めて三十分は優に超えているし、早くやらないと。
「混ぜ方は?」
「卵黄と一緒だよ。ただレシピにある通り、グラニュー糖は三回に分けて入れてね。量らなくても、感覚でいいから」
「感覚って言われても……」
「一気に入れなければ、あと過剰に入れすぎなければ適当でいいから」
適当でいい、と言われたから、とりあえず小さいボウルに量ったグラニュー糖を傾けてみる。さらさらと卵白の中に着地していく。
「うん。いい感じ。一気に入れるとメレンゲにならなくなるから、横着はしないでちゃんと三回に分けてね」
「わかった」
空気を含ませるように。
底から円を描くように。
さっきまでやっていたことを頭の中で思い出しながら、メレンゲを立てていく。
「はい、ストーップ。お砂糖タイムです」
あの黄緑がかった卵白の色はどこへ行ったのか。今や卵白は、その名の通り白い泡の集合体のようになっている。
「ここで二回目のグラニュー糖を入れます。半分くらいね」
「半分ね。わかった」
残量の半分を入れて、引き続き泡立て続ける。
何分経ったのだろう。ドゥリュっとした塊だった卵白が、結合が取れたように柔らかい泡になっていく。試しに泡だて器を持ち上げてみると、八分立ての生クリームのように、泡だて器の中に入って、メレンゲも一緒に持ち上げられる。
落ちるのは早いけど。
「慣れてきたみたいだね。もう終盤だから、ここで残ったグラニュー糖を全部入れて、ボウルをひっくり返しても落ちないくらい泡立てて」
「うん」
「あ、でも、あんまりやりすぎるとキメの粗いメレンゲになっちゃうから、生クリームのときと同じように、様子を見ながら泡立ててね」
必死になって泡立てながらも、疑問が生まれた。なんでボウルをひっくり返して確認する方法を勧めてくるんだろうって。
そんなことしたら、僕はメレンゲまみれになってしまうじゃないか。
「そろそろかな。ひっくり返してみて」
「ほんとにやるの?」
「大丈夫だよ。ほら、現に泡だて器で掬ったやつ、落ちてないわけだし。ゆっくりひっくり返してみて」
返す言葉も思いつかないまま、恐る恐るボウルをひっくり返す。
一瞬、時が止まったのかと思った。
メレンゲは、ボウルから離れずに、全く落ちてくる様子がない。
「すごっ。落ちないんだね」
「当たり前だよ。できてたら、落ちないから。完成の目安になるでしょ?」
咲結さんは得意げに笑いながら、「もういいよ」とボウルの上下を正しい方向に戻した。
「さあ、全力で混ぜるのはこれが最後だよ。頑張ろう!」
咲結さんが冷蔵庫から卵白の入ったボウルを取り出す。
「これ、実際一人だと何分くらいでやるの?」
会話をしながら、普段使わないような筋肉を使って疲れ切った腕を小刻みに揺らして少しでも腕の疲れを落とす。
「三十分ちょっとくらいかな。優緋くんも続けたらできるようになるよ」
「三十分って、マジで?」
「マジマジ。ほら、急がないと。いくら氷水に浸してるからって、生クリームが溶けちゃうよ」
それは嫌だ。
もう始めて三十分は優に超えているし、早くやらないと。
「混ぜ方は?」
「卵黄と一緒だよ。ただレシピにある通り、グラニュー糖は三回に分けて入れてね。量らなくても、感覚でいいから」
「感覚って言われても……」
「一気に入れなければ、あと過剰に入れすぎなければ適当でいいから」
適当でいい、と言われたから、とりあえず小さいボウルに量ったグラニュー糖を傾けてみる。さらさらと卵白の中に着地していく。
「うん。いい感じ。一気に入れるとメレンゲにならなくなるから、横着はしないでちゃんと三回に分けてね」
「わかった」
空気を含ませるように。
底から円を描くように。
さっきまでやっていたことを頭の中で思い出しながら、メレンゲを立てていく。
「はい、ストーップ。お砂糖タイムです」
あの黄緑がかった卵白の色はどこへ行ったのか。今や卵白は、その名の通り白い泡の集合体のようになっている。
「ここで二回目のグラニュー糖を入れます。半分くらいね」
「半分ね。わかった」
残量の半分を入れて、引き続き泡立て続ける。
何分経ったのだろう。ドゥリュっとした塊だった卵白が、結合が取れたように柔らかい泡になっていく。試しに泡だて器を持ち上げてみると、八分立ての生クリームのように、泡だて器の中に入って、メレンゲも一緒に持ち上げられる。
落ちるのは早いけど。
「慣れてきたみたいだね。もう終盤だから、ここで残ったグラニュー糖を全部入れて、ボウルをひっくり返しても落ちないくらい泡立てて」
「うん」
「あ、でも、あんまりやりすぎるとキメの粗いメレンゲになっちゃうから、生クリームのときと同じように、様子を見ながら泡立ててね」
必死になって泡立てながらも、疑問が生まれた。なんでボウルをひっくり返して確認する方法を勧めてくるんだろうって。
そんなことしたら、僕はメレンゲまみれになってしまうじゃないか。
「そろそろかな。ひっくり返してみて」
「ほんとにやるの?」
「大丈夫だよ。ほら、現に泡だて器で掬ったやつ、落ちてないわけだし。ゆっくりひっくり返してみて」
返す言葉も思いつかないまま、恐る恐るボウルをひっくり返す。
一瞬、時が止まったのかと思った。
メレンゲは、ボウルから離れずに、全く落ちてくる様子がない。
「すごっ。落ちないんだね」
「当たり前だよ。できてたら、落ちないから。完成の目安になるでしょ?」
咲結さんは得意げに笑いながら、「もういいよ」とボウルの上下を正しい方向に戻した。



