私とあなた。

二人と一緒にしばらく歩くと五組の扉が見えてきた。心臓が脈打つ。
「 緊張してきたぁー。」
「 分かる。 」
二人が仲良さげに会話している所を見ると自然と緊張が消えていく。
「 美亜ちゃんは緊張しなくていいなー 」
「 えー。これでも結構緊張してる方だよ 」
二人を傷つけないように嘘をつく。
桃ちゃん達は私のついた嘘に気づかず
ドアに手をかけた。クラスのみんなが一斉にこちらを見てくる。私は、たまらず顔を背ける。
「 わあ。まだ来てなかったクラスメイトがいたんだ。よろしくね 」
その声の主を見て私は絶句した。
柏木君だった。
できるだけ顔を合わせないように壁の方を見ていた。すると桃ちゃんが心配そうにこちらを見てきた。
「 美亜ちゃん大丈夫?顔色悪いよ」
「 心配してくれてありがとう。私は大丈夫だよ」
また嘘をついた。桃ちゃんを傷つけないように。
柏木君が自分の座っていた机から降り、こちらに向かってきた。そして私の顔を見るなり、笑い出した。
「 あぁ。あの子か。嘘告を本当だと思って浮かれちゃった奴 」
私は何も言い返せない。
「 お前、何様だよ。」
「 は?お前には関係ないだろ「」
気づけば晴と柏木君が喧嘩をしている。
桃ちゃんは、二人を交互に見ながらハラハラしている。
五分ほど言い争った後、晴がこちらに向かってきた。その顔は嫉妬と少し怒りが混じっていた。
「 お前、あいつに告白されてたのか? 」
「 え?うん。勢いでお願いしますって言っちゃったけどね... 」
「 じゃあさ... 」
少し沈黙が続いた後、晴が私の顔をじっと見る。
「 俺と付き合わない?」
彼は、少し恥ずかしげに下を向いている。
「 え...?」
私が、戸惑っていると晴が近づき
「 偽装だよ。偽装。少なくともあいつに付きまとわれる可能性は減るだろ。美亜には無理してほしくないんだよ 」
悲しげにこちらを見て、また下を向いた。
「 分かった。晴がそう言ってくれるなら。じゃあまず桃ちゃんと阿月に言わないとね」
「 そうだったぁ。すっかり忘れてた 」
晴は、こう見えて意外と周りを見ないタイプだ。昔からいつもそうだった。そんな事を思い出して『変わってないな』と思いつつ、私は桃ちゃんの所へ晴と向かった。
「 桃ちゃん。実は伝えたいことがー 」
「 桃、俺達実は付き合うことになったんだ 」
「 え...そうなの?』
晴、突っ走んないでよ。おかげで桃ちゃん困っちゃったじゃん。
桃ちゃんは、によによと笑い、
「 お幸せにね 」
と、言った。この後絶対いじられるやつだ。全部、晴のせいにしよっと。
数分後、チャイムが鳴った。
私は、見ておいた座席に座った。よりによって右隣が晴だ。ちょっと気まずい。
左隣は、美女代表みたいな女の子が座っている。確か名前は多山さんだ。
「 よろしくね。那須山さん 」
急に話しかけられたせいか、「 うぐぅ「」という声が出てしまった。最悪だ。思わず机に突っ伏してしまう。
「 大丈夫? 」
そんな声が聞こえる。きっと多山さんだろう。もうすぐ授業が始まることを思い出し、顔を上げた。外から来る光が眩しい。早く授業始まらないかなと晴に話しかける。
「 えー。まあ別に始まってもいいけど寝るだけだなー」
絶対そう言うと思った。呆れながら私は授業に参加した。