可能性は売ってない

――翌朝。

三組の前の席の男子が言った。

「青山、体験会さ、妹連れて行っていい?」

「妹?」

「小五。剣とか好きなんだよね。危なくない?」

「危なくないようにする」

言ってから、言い方が硬いと思った。

でも、相手は笑った。

「青山が言うなら大丈夫そう」

またそれか。

大丈夫そうな人間。

俺は人生で初めて、そういう役を任されているらしい。

責任が地味に重い。

女子の一人はチラシを見て言った。

「これ、青山が書いたんでしょ?」

「なんで知ってる」

「赤羽が言ってた」

赤羽。

その名前で、胸が少し詰まった。

「何を」

「朔の見出し、いいんだよって。一組で言ってた」

「……あいつ」

勝手に宣伝するな。

いや、宣伝はいい。

でも、俺の見出しを本人のいない場所で褒めるな。

逃げ場がない。

赤羽は、俺とまともに話していないくせに、そういうことは言う。

腹が立つ。

少しだけ、嬉しい。

さらに腹が立つ。

人間の感情は、もう少し分類しやすくしてほしい。