可能性は売ってない

廊下に出ると、一組のほうから赤羽の声が聞こえた。

「だから、体験会! 日曜! 商店街!」

声は大きかった。

大きかったけど、いつもより少し雑だった。

俺は廊下の角で足を止めた。

赤羽は一組の前でチラシを持っていた。何人かが笑っている。赤羽も笑っている。

でも、俺が近づくと、赤羽は一瞬こっちを見た。

目が合った。

俺は言おうとした。

昨日は。

ごめん。

言いすぎた。

喉の奥に、言葉が引っかかる。

その瞬間、一組の男子が赤羽の肩を叩いた。

「赤羽、それってさ、防具つけるやつ?」

「あ、そう! マスクつける。顔守るやつ!」

赤羽がそっちを向く。

タイミングが消えた。

いや、消えたんじゃない。

俺が出せなかっただけだ。