可能性は売ってない

朝食の席で、母さんが俺を見た。

「顔、暗いね」

「普通」

「普通って便利ね」

「便利だから使ってる」

「フェンシング、今日もあるんでしょ?」

「ある」

「赤羽くんと行くの?」

味噌汁を飲む手が止まった。

「……たぶん」

「たぶん?」

「校門にいたら」

「いなかったら?」

「クラブには行く」

自分で言って、少し驚いた。

赤羽がいなくても、クラブには行く。

昨日の夜、赤羽に「俺がいなくてもやれるっしょ」と言われて腹が立った。
でも、今朝の俺は、赤羽が校門にいなくてもクラブに行くと言った。

矛盾している。
人間は面倒だ。
特に俺は面倒だ。