可能性は売ってない

校門の前には、本当に赤羽がいた。

しかも一人じゃなかった。一組の生徒らしき数人に囲まれて、何かを話している。赤羽はその中心で笑っていた。

「で、赤羽は部活どこ入るの?」

「俺は外のクラブ。フェンシング」

「フェンシングって、あの白いやつ?」

「そう! 白いやつ! 剣のやつ! めちゃくちゃ面白い!」

「赤羽っぽいな」

「だろ!」

赤羽は俺を見つけると、ぱっと顔を明るくした。

「朔!」

「……声」

一組の生徒たちがこっちを見た。

「誰?」

「昨日の初ポイントの人」

「その紹介やめろ」

「三組の青山朔。フェンシング仲間」

「仲間じゃない。体験者」

「まだ、な」

「その『まだ』に未来を込めるな」

一組の生徒たちは面白そうに笑った。俺は軽く頭を下げる。こういうときの会釈は便利だ。薄い存在感をさらに薄く伸ばせる。

赤羽はカバンを肩にかけ直した。

「じゃ、行くか」

「俺、行くって言ってない」

「歩きながら考えよう」

「歩き出した時点でほぼ決定だろ」

「人生は歩きながら決める」

「昨日から人生の扱いが雑なんだよ」

赤羽は楽しそうに歩き出した。

俺は、ため息をついてからその横に並んだ。