可能性は売ってない

その日の練習後、俺は三枝コーチに写真の許可を取った。

「チラシに使う写真、撮ってもいいですか」

言ってから、俺は自分で驚いた。

自分から提案した。
しかも、まあまあ具体的な提案だ。

赤羽が目を丸くする。

「朔が動いた」

「珍獣みたいに言うな」

「いや、嬉しくて」

「そういうのいい」

三枝コーチはうなずいた。

「もちろん。ただし、小学生の顔が写るときは保護者の許可が必要。最初は後ろ姿とか、手元とか、レーンの雰囲気がいいかもね」

白石先輩が言った。

「剣先と足元」

「え?」

「知らない人は、顔より動きのほうが見る」

なるほど、と思った。

赤羽はスマホを構えて、すぐに自分を撮ろうとした。

「俺のかっこいい構えを」

「情報が赤羽に寄りすぎる」

俺は止めた。

「なんでだよ。客寄せになるだろ」

「音量が写真から漏れる」

「漏れない!」

白石先輩が淡々と言った。

「漏れる」

「先輩まで!」