可能性は売ってない

八百屋のおばさんは、チラシを一枚受け取ってくれた。

「貼る場所あるかなあ。ごめんね、今、店の値上げの案内も貼らなきゃで」

パン屋のお姉さんは「面白そうだけど、うちも協賛は店長に聞かないと」と言った。

花屋のおばさん――店の名札には『田端』と書いてあった――は、チラシをじっと見た。

「フェンシングかあ。珍しいね。地域情報誌の記者さん、知ってるよ」

赤羽の目が光った。

「本当ですか!」

「うん。『ねりま日和』って小さい情報誌。商店街のイベントとか、子どもの習い事とか載せてる。記事にしてくれるかはわからないけど、体験会をちゃんとやるなら、声かけてみてもいいかもね」

地域情報誌。
記者。

その言葉は、『体験会』より少し現実味があった。

赤羽は勢いよく頭を下げる。

「お願いします!」

「まだ何も決まってないからね」

田端さんは笑った。

「それと、チラシ」

「はい!」