可能性は売ってない

練習試合は続いた。

白石先輩は落ち着いていた。
相手が速くても、前に出ても、白石先輩は慌てない。眠そうな目で、必要な分だけ下がり、必要な分だけ剣を出す。

赤羽は何本か勝った。

赤羽が前に出ると、空気が変わる。
レーンの端にいてもわかる。あいつの一歩は、やっぱり強い。相手が少しでも迷うと、その迷いごと突き破るみたいに飛び込む。

ランプが光る。

「ポイント、赤羽」

赤羽はマスクの中でたぶん笑っている。
見えなくてもわかる。
うるさい人間は、マスクをしていてもうるさい。