可能性は売ってない

放課後、校門の前に赤羽がいた。

当然のように。

俺も当然のように近づいてしまったので、もうお互い様かもしれない。いや、俺はまだ認めていない。何をだ。

「朔!」

「声」

赤羽は歩きながら、商店街のほうへ足を向けた。

練馬の夕方は、昨日より少しだけ暖かかった。四月の風が、制服の袖口をくすぐる。西武線の音が遠くで流れて、商店街の八百屋では新玉ねぎの箱がまた積まれていた。

肉のこばやしの前を通ると、油の匂いがした。

赤羽の顔が一瞬そっちへ向く。

「練習後」

俺が先に言うと、赤羽は満足そうに笑った。

「わかってきたな」

「わかりたくなかった」

「練習後のコロッケまでがフェンシング」

「それ、毎回言うの?」

「大事なことは何回でも」

「テスト範囲みたいに言うな」

店先の掲示板には、今日も商店街のポスターが貼られていた。

『ふれあい市』

『体験ブース参加団体募集』

『協賛店募集中』

風で端がぱたぱた揺れている。