学校へ向かう道は、昨日よりも現実的だった。
桜の花びらはだいぶ歩道に落ちていて、踏まれて薄いピンクの染みみたいになっている。朝の西武線は混んでいて、車内の人たちは全員「今日も仕方ないから生きるか」みたいな顔をしていた。俺もその一員なので、偉そうに観察する資格はない。
高校の校門をくぐると、昨日より少しだけ空気が軽かった。
入学式の特別感はもう消えていて、校舎は普通に学校の顔をしている。下駄箱の前では、クラスメイトらしき集団が昨日の自己紹介の話をしていた。誰が面白かったとか、誰がもうLINEグループを作ったとか、誰が中学のときから有名だったとか。
俺はその会話の端をすり抜けた。
青山朔、一年三組。
出席番号は1番。中学のときから「青山」はだいたい1番。名前順の人生は、先頭に立たされるのに、本人の中身は別に前向きじゃない。名簿制度の皮肉だ。
教室に入ると、すでに何人かが席を移動して話していた。
「昨日さ、担任めっちゃ早口じゃなかった?」
「部活どこ見る?」
「バスケ部やばそうじゃね?」
「あ、青山くん、おはよ」
「……おはよう」
挨拶を返す。声の大きさは、可もなく不可もなく。たぶん。
俺の席は窓側から二列目の後ろ。悪くない。窓の外が見えるし、先生からも遠すぎない。遠すぎると逆に目立つ。人間、ほどほどの距離が一番安全だ。
席に座って、机の中にプリントを入れる。
筋肉痛のせいで、しゃがむ動作すらいちいち重い。
桜の花びらはだいぶ歩道に落ちていて、踏まれて薄いピンクの染みみたいになっている。朝の西武線は混んでいて、車内の人たちは全員「今日も仕方ないから生きるか」みたいな顔をしていた。俺もその一員なので、偉そうに観察する資格はない。
高校の校門をくぐると、昨日より少しだけ空気が軽かった。
入学式の特別感はもう消えていて、校舎は普通に学校の顔をしている。下駄箱の前では、クラスメイトらしき集団が昨日の自己紹介の話をしていた。誰が面白かったとか、誰がもうLINEグループを作ったとか、誰が中学のときから有名だったとか。
俺はその会話の端をすり抜けた。
青山朔、一年三組。
出席番号は1番。中学のときから「青山」はだいたい1番。名前順の人生は、先頭に立たされるのに、本人の中身は別に前向きじゃない。名簿制度の皮肉だ。
教室に入ると、すでに何人かが席を移動して話していた。
「昨日さ、担任めっちゃ早口じゃなかった?」
「部活どこ見る?」
「バスケ部やばそうじゃね?」
「あ、青山くん、おはよ」
「……おはよう」
挨拶を返す。声の大きさは、可もなく不可もなく。たぶん。
俺の席は窓側から二列目の後ろ。悪くない。窓の外が見えるし、先生からも遠すぎない。遠すぎると逆に目立つ。人間、ほどほどの距離が一番安全だ。
席に座って、机の中にプリントを入れる。
筋肉痛のせいで、しゃがむ動作すらいちいち重い。



