可能性は売ってない

白石先輩が短く言った。

「勝ち方も、変わった」

以前、白石先輩は俺に言った。

負け方が変わった。

今度は、勝ち方。

勝つ、というには小さな一本だ。

試合なら、まだ先は長い。

赤羽が本気で来たら、俺はたぶんまだ何本も取られる。

黒瀬には、もっと遠い。

でも、この一本は俺が取った。

距離を見て、足を使って、赤羽の肩と前足を見て、自分で前に出て取った。

まぐれじゃない。

そのことだけで、俺の胸はしばらく熱かった。