君と過ごしたブルーブルーブルー

 ---深くて黒い水の底へ、君が静かに沈んでいく。
 どうして?君は自分でもわからないといった戸惑った表情《かお》で。
 私は沈んでいく君の手を必死に掴もうとするけれど、指先が軽く触れ合っただけで、さらに深く、もう何も見えない暗闇に君は堕ちて行った。
 ごめんなさい。陽《はる》、ごめん。ごめんなさい。
 私は、声が枯れるまで君の名前を呼び、泣き叫んでいた---

 目が覚めると、私は本当に泣いていた。目尻からこめかみに流れ落ちた涙を拭いながら、
 「陽《はる》、ごめん」
 夢と同じ言葉をつぶやく。陽《はる》がいなくなって、もうすぐ2年が経とうとするのに時々同じ夢を見る。
 陽《はる》との最後の旅行になった、北海道の美瑛町にある〝白金・青い池〟はコバルトブルー色の絵の具から、そのまま絞り出したようで、初めて陽《はる》に告白した日に見た、あの空の青さが広がっていた。だけど、夢の中では、真っ黒な水の中に(はる)が沈んでいくのだ。
 私の罪悪感がそんな夢を見させるのか?
 私は深く息を吐いた。横殴りの雨が窓ガラスに叩きつける音だけが1Kの部屋に響いていた。
 そう言えば昨日、近畿地方も梅雨入りしたと、毎朝、観ている情報番組のお天気キャスターが言ってたな。中学生の時から、ずっと観ているけど、このお天気キャスターも何代目だろう?
 社会も周りの友人たちや、親友の唯も変わってないようで、確実に時計の針を進めている。
 毎日、星占いばかり必死になってチェックしていた、あの無邪気な頃には私は戻れない。
 私と(はる)だけが更新できずに、止まったまま。2度と時計の針は進まない。
 私は、ベッドサイドに置いている小さな白いアナログ時計に目をやる。
 「7時か…」
 このまま、ベッドに沈み込んでいたい気持ちを押しころして、気力で起き上がり、裸足のまま、私は洗面台に向かった。
 鏡に映る私は、大きな目は少し窪み、青白い顔をしていた。まるで懺悔の念だけで、土の中から這い出てきたゾンビのようだなと思った。
 冷たい水で、叩くように顔を洗い、8時20分のバスに間に合うように急いで身支度をした。