シンデレラ・スキャンダル

◇◇◇◇◇

『いつもどおりの毎日になるはずだった
あなたと出会って全てが変わる
青い海 吹き抜ける風 輝く太陽 全ての時間が瞬いていく
あなたの瞳がわたしを見つめる度 高鳴りを増していく 怖い程に

波の音が気持ちを加速させる
きっとこんなにも あなたの笑顔が眩しいのは太陽のせい
言い訳しながら 惹かれていく

出会いは突然に 必然に 二人を引き寄せる
幸せがここにあると教えてくれたあなたに ただ伝えたい

輝く星をあなたに重ね合わせて 伸ばした手を引くの
それでもどうしても その胸に飛び込みたいと願ってしまうから……』

◇◇◇◇◇

 ふと目を覚ますと、わたしは再び龍介さんの腕の中にいた。まだ意識は霧の中を漂っているようで、自分がおかれている状況をすぐに把握できない。

 動こうと身じろぎした瞬間、龍介さんの(たくま)しい腕によって、さっきまで触れることのできなかった胸元に、ぐっと引き寄せられた。まるで「逃がさない」と言われているようで、鼓動が一つ跳ねる。

 もう、これは一種の条件反射みたいなものだ。龍介さんに抱き締められると、わたしは反射的に息を深く吸い込んで、その香りを確かめてしまう。

 だって、龍介さんはいつもいい匂いがする。それは、清潔感のある石鹸の香りだったり、微かに残る香水の香りだったり、時には夜の匂いそのものだったりするけれど、どんな香りもわたしを安心させる。

 半分寝ぼけた頭のまま、彼の胸元に頬を()り寄せれば、熱を帯びた素肌がひどく気持ちいい。

「あー、ちょっと綾乃さん?」

 頭上で、龍介さんの少し呆れたような、それでいてどこか甘い声が降ってくる。

「また匂いかいでるでしょ?」

 図星を指されて、わたしは腕の中で小さく身じろぎした。

「……せっけん」

 掠れた声で、なんとかそれだけを絞り出す。

「シャワー浴びたからね」

「ん、いい匂い」

 今度はもっとはっきりと言葉にする。本当に、清々しい石鹸の香りがする。彼の腕が、わたしの背中をゆっくりと撫でる。その手のひらの大きさと温もりが、朝の冷え始めた空気に心地よい。