シンデレラ・スキャンダル



 オーブンでチキンが焼かれて、部屋中に食欲をそそる香りが漂い始めると、どこからともなく胃が空腹を訴える音が聞こえた。その音の元を探して辺りを見渡すと、テーブルに突っ伏す二人の姿。

「龍介さん?」

「腹減って死ぬ」

「リサも。まだぁ?」

 同じ体勢の二人は同じくお腹が空いたらしい。太陽はちょうど空の真上にきていて、この地に昼の時間が訪れていることを知らせていた。

 テーブルに料理が運ばれると、二人は目を輝かせてそれを口に運ぶ。見事に重なるその姿にこちらは笑いが止まらない。そして、二人はひとしきり食べると、キッチンに向かい、飲み物を物色し始めた。

「何にしようかなぁ」

「リサはね~」

「あ、俺、シャンパーン」

「リサはジンジャーエール! ねえ、リュウとって!」

 お互いのコップに注ぎ、プハーという声が聞こえてきそうないい飲みっぷりを披露してくれる二人。

「なんか、もう……そっくりですね」

「リュウに懐きすぎて、似てきちゃったのよね」

「俺がお父さんなのにねぇ」

「リュウは優しいし子供が大好きなのよ。見た目とは違うでしょう」

「……そうですね、本当に違います。飛行機で会ったときは……それはもう怖い人だと思いましたから。関わったら危ないって」

 わたしは正直な感想を漏らした。あのときの龍之介さんの見た目の威圧感は凄まじく、飛行機でなかったら、わたしは一目散に逃げ出していたと思う。

 それを聞いた潤さんと忍さんは、堪えきれなかったように、大きな口を開けながら、のけぞって大笑いし始めた。二人とも腹を抱え、涙目になっている。

「あはは! やっぱり綾乃もそう思ったのね! 誰もが通る道よ、それ!」

「本当に、あいつは見た目と中身のギャップがすごいから、みんな初見は戸惑うんだよな」

 二人の笑い声がリビングに響き渡る。わたしもつられて少し笑ってしまったが、たしかに、これほどまでに外見と内面が乖離(かいり)している人間に会ったのは初めてかもしれない。忍さんは、笑いすぎて少しぜいぜいと肩で息をしながら、紅茶を一口飲んだ。