シンデレラ・スキャンダル

 オーナーのケンも、さっきの男たちも、わたしが一人じゃなかったら、ああいう態度ではなかったかもしれない。ハワイならなんとかなると思っていたけれど、やはりここは外国。日本とは勝手が違う。

「どれくらいハワイにいるの?」

 わたしの様子を見て更に心配になったのか、龍介さんが顔を覗き込みながら、とても優しい声色で聞いてきた。子供に話しかけるようなその声に、わたしの心は更に揺れる。

「十日間です」

「そっか……うん。そしたらさ、もし綾乃ちゃんが良ければだけど、こっちに来る? 俺も今回は二週間くらいいるんだけど、スタッフとか他の人もいるし。五つベッドルームがあって一部屋余ってるから」

「え……」

 予想外の提案に、言葉が詰まる。いくらスタッフがいるとはいえ、今日出会ったばかりの男性の家に行くというのは、普通なら即座に断る場面だ。けれど、脳裏によぎるのは、あの静かすぎるレンタルハウスと、オーナーのねっとりとした視線。それに比べて、目の前の彼の瞳は、驚くほど澄んでいる。

 迷っているわたしを見透かしたように、彼がふっと表情を緩めた。そして、帽子の上からわたしの頭をぽんっと撫でた。

「とりあえず、これからこっちにいる友達の家族と集まるから、それはおいでよ。帰りはちゃんと送っていく」

「でも」

「飯は一人で食うより、みんなと一緒に食った方が絶対うまいよ」

 穏やかにそう言って、こちらを覗き込みながら「ね?」と柔らかく瞳を細める。その笑顔を見ると、もう否定の言葉が出て来なくて、わたしは気付いたら頷いていた。

「ね、決まり」

「……いいんですか? いきなりお邪魔して」

「大丈夫だよ。きっと喜ぶよ……あ! じゃあ、今から食材買うから、それは付き合ってくれる?」

「はい、ぜひ。なんかすみません、本当に。お世話になってばかりで」

「いや全然。こうやって旅先で仲良くなるって楽しいよ。じゃあ、とりあえずよろしく」

 そう言って、彼が右手を差し出す。その手と彼の顔を交互に見ても、彼の表情は変わらなくて、少しオドオドしながらわたしも自分の手を出した。

「……よ、よろしくお願いします」

 彼の手に自分の手を重ねると、少し熱いほどの温もりを感じる。あの広い部屋で感じていた心細さがかき消されていく。この彼の優しさはどこから来るのだろう。