シンデレラ・スキャンダル

◇◇◇

 突き抜けるような青空と、穏やかな波の音。思い出の場所、ハワイ。白いチャペルの前で、心地よい風がベールを揺らした。

「アヤノ、とってもキレイ。プリンセスね!」

 純白のドレスの裾が、風にふわりと広がる。

「ありがとう、リサ」

「わたしも、いつかアヤノみたいになれる?」

 ピンクのチュールをあしらった可愛らしいドレスに身を纏ったリサが、瞳をきらきらと輝かせて聞くから、思わず笑みを返した。

「なれるわ」

「本当?」

「だって、リサは、わたしと龍介さんにとって、お姫さまだもん。ね、龍介さん」

「うん。リサは生まれた時から、俺にとってお姫様だよ」

 白いタキシードに身を包んだ龍介さんが、リサを軽々と抱き上げる。金髪と小麦色の肌が白い衣装によく映えて、目が眩む。彼はその黒目がちな瞳を、愛おしそうに細めた。

「早くステキなプリンセスになりたいな」

「……でも、まだ嫁は早くない? 俺、イヤなんだけど」

「ちょっと、龍介さん。そんなリアルに」

「だってリサが嫁にいくとか……変な男だったらどうしよう」

「リュウ? 大丈夫よ。わたし、リュウよりカッコいい人じゃないと結婚しないわ」

「だって、龍介さん」

「……リ、リサ」

「もう。リュウってば。泣かないのよ」

 感極まった龍介さんの瞳から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちる。自分の結婚式でも泣いて、リサの言葉でも泣いて。そんな彼を見て、周りには温かい笑顔が溢れる。

 金髪、タトゥー、髭にピアス。見た目は少し厳ついけれど、誰よりも涙もろくて優しい、わたしの王子様。 彼の傍にいれば、いつだって笑顔になれる。

 わたしはドレスの裾を持ち上げ、彼に向かって一歩を踏み出す。 脆いガラスの靴なんて、もういらない。わたしは、彼と共に、自分の足でしっかりと大地を踏みしめて、降り注ぐ光の中を歩いていく。


◇◇◇

 シンデレラは小麦色の王子に恋をして、身分違いの愛をつかみ取る。

 金髪タトゥーの黒王子よ、どうかこの先もシンデレラに恋歌を。

 彼女に優しく触れる、その唇で。


 ——『シンデレラ・スキャンダル』Fin.——