◇
ホテルを出てからなにも話さないまま、ただ手を繋いで歩いてきた。海辺の風はもう冷たくて、空いている手でマフラーを持ち、顔を埋めるようにしてその寒さに身を竦めた。すると、それに気付いたのか、立ち止まった龍介さんが、わたしをその腕の中に包み込んでくれる。
温かい。彼の腕の中は、深く息をつける。その胸に顔をうずめればうずめるほど、鼓動が早まるのに、心臓が掴まれたように苦しくなるのに、感じるのは幸せだけ。
「あったかい」
「……順番、めちゃくちゃになっちゃって、ごめんね」
小さく首を横に振ると、いつものようにわたしの髪を大きな手が撫でていく。
「もう離れるとか無理だから」
少し茶化した言い方なのに、その言葉でまた涙が溢れていく。
「わたしもです」
龍介さんが抱き締める力を強めるから、彼の香りが強くなり、全てが包まれていく感覚に陥る。
「俺は綾乃を守りたい。これから先、何があっても俺が絶対に守るから傍にいてほしい」
「はい」
「俺のこと信じて、ついてきてほしい」
「はい」
緩んだ腕の力に促されるように龍介さんを見上げれば、黒目がちな瞳が細められる。きらきらと光るその笑顔にわたしは弱い。
「幸せにするよ。絶対に。だから、ずっと一緒にいよう」
初めて恋に落ちた人。眩しい程に輝く綺麗でかけがえのない時間を一緒に過ごしてくれる人。胸が満たされて、たった二文字が中々声にならない。涙が溢れたままの顔で何度も頷くと、目の前にある瞳が嬉しそうに細められる。彼の腕の中で彼の香りに包まれたまま、わたしは必死に声を絞り出した。
「……はい」
彼が笑ったことがわかる。
どうして、彼の腕の中はこんなに温かいのだろう。どうして、こんなにも恋しく愛おしいのだろう。今まで味わったことのない感情がわたしの中に芽生えていく。咲き乱れるような嬉しさと幸せで、身体も心も、全てが満たされていく。
「愛してるよ」
その声が鼓膜を震わせるたび、指先まで痺れるような熱が走る。海風は冷たいはずなのに、彼に触れているところから溶けてしまいそう。
やっぱり龍介さんといると全てが輝いていく。優しく落とされる唇も、優しく触れる彼の手も指も、全てが喜びに変わる。愛していると耳元で囁かれる度、視界が滲んで、彼の顔がよく見えない。涙を拭うこともせずに、わたしは彼に縋りつくように背中に腕を回した。もう、離さない。絶対に。
「綾乃、愛してる」
「わたしも……愛してる」
彼は黒の帽子のつばを少し持ち上げて、わたしを見つめた。そして少しずらすと、その影に隠れるようにして背をかがめてわたしの唇に優しく触れる。
彼が帽子のつばをグッと引き下げる。ふわりと視界が暗がりに覆われた。世界から切り離された、二人だけの小さな世界。そこにあるのは、彼の熱い瞳と、甘い吐息だけ。
「……ん」
何度も何度も唇が触れ合う。
これはきっと運命。何度離れても、糸を手繰り寄せるようにわたしたち二人を結び付ける悪戯に巡り合う先、あなたがいれば、愛も夢も幸せも全てが光り輝く。恋は刹那に瞬きを繰り返し、絶えることなく光り続ける。
ホテルを出てからなにも話さないまま、ただ手を繋いで歩いてきた。海辺の風はもう冷たくて、空いている手でマフラーを持ち、顔を埋めるようにしてその寒さに身を竦めた。すると、それに気付いたのか、立ち止まった龍介さんが、わたしをその腕の中に包み込んでくれる。
温かい。彼の腕の中は、深く息をつける。その胸に顔をうずめればうずめるほど、鼓動が早まるのに、心臓が掴まれたように苦しくなるのに、感じるのは幸せだけ。
「あったかい」
「……順番、めちゃくちゃになっちゃって、ごめんね」
小さく首を横に振ると、いつものようにわたしの髪を大きな手が撫でていく。
「もう離れるとか無理だから」
少し茶化した言い方なのに、その言葉でまた涙が溢れていく。
「わたしもです」
龍介さんが抱き締める力を強めるから、彼の香りが強くなり、全てが包まれていく感覚に陥る。
「俺は綾乃を守りたい。これから先、何があっても俺が絶対に守るから傍にいてほしい」
「はい」
「俺のこと信じて、ついてきてほしい」
「はい」
緩んだ腕の力に促されるように龍介さんを見上げれば、黒目がちな瞳が細められる。きらきらと光るその笑顔にわたしは弱い。
「幸せにするよ。絶対に。だから、ずっと一緒にいよう」
初めて恋に落ちた人。眩しい程に輝く綺麗でかけがえのない時間を一緒に過ごしてくれる人。胸が満たされて、たった二文字が中々声にならない。涙が溢れたままの顔で何度も頷くと、目の前にある瞳が嬉しそうに細められる。彼の腕の中で彼の香りに包まれたまま、わたしは必死に声を絞り出した。
「……はい」
彼が笑ったことがわかる。
どうして、彼の腕の中はこんなに温かいのだろう。どうして、こんなにも恋しく愛おしいのだろう。今まで味わったことのない感情がわたしの中に芽生えていく。咲き乱れるような嬉しさと幸せで、身体も心も、全てが満たされていく。
「愛してるよ」
その声が鼓膜を震わせるたび、指先まで痺れるような熱が走る。海風は冷たいはずなのに、彼に触れているところから溶けてしまいそう。
やっぱり龍介さんといると全てが輝いていく。優しく落とされる唇も、優しく触れる彼の手も指も、全てが喜びに変わる。愛していると耳元で囁かれる度、視界が滲んで、彼の顔がよく見えない。涙を拭うこともせずに、わたしは彼に縋りつくように背中に腕を回した。もう、離さない。絶対に。
「綾乃、愛してる」
「わたしも……愛してる」
彼は黒の帽子のつばを少し持ち上げて、わたしを見つめた。そして少しずらすと、その影に隠れるようにして背をかがめてわたしの唇に優しく触れる。
彼が帽子のつばをグッと引き下げる。ふわりと視界が暗がりに覆われた。世界から切り離された、二人だけの小さな世界。そこにあるのは、彼の熱い瞳と、甘い吐息だけ。
「……ん」
何度も何度も唇が触れ合う。
これはきっと運命。何度離れても、糸を手繰り寄せるようにわたしたち二人を結び付ける悪戯に巡り合う先、あなたがいれば、愛も夢も幸せも全てが光り輝く。恋は刹那に瞬きを繰り返し、絶えることなく光り続ける。


