シンデレラ・スキャンダル

◇◇◇

 鬱蒼(うっそう)とした木々の中、細い道をタクシーが駆け抜けていく。

「お客さんみたいな若い方、中々来ねぇですよ。お見舞いですか?」

 千葉の南側に残る独特の訛りは、昔聞いたおじいちゃんの喋り方と同じ。少し懐かしく思いながら、小さく頷いて、「はい」と答えた。

 今、どんな姿をしているのだろう。わたしをどう思っているのだろう。本当に会えるのだろうか。考えが浮かんでは消えてを繰り返す。答えが見つかるはずもなくて、代わりに、介さんに渡された小さな紙を両の手のひらで包み込んだ。

 昨日、わたしは龍介さんが用意してくれた部屋で夜を明かした。ライブを終えたLegacyのメンバーが次々と部屋を訪れる。そして、みんな口々に「絶対に大丈夫だから」と告げた。仁さんは龍介さんと一緒に来ると、わたしの頭をくしゃりと撫でて低い声で告げる。

「Legacyらしさを貫き通すよ。俺たちなら大丈夫。メンバーはもちろん、会社の仲間も……そしてファンのみんなのことも俺は信頼してる。それは龍も同じだと思う。だから、綾乃ちゃんも俺たちを信じて。俺たちはこんなやり方に絶対に負けない」

「……はい」

「っと、また呼び出しだ。スタッフも明日の調整で奔走しててね。俺もまだ調整あるから行ってくるね」

「すみません、わたし」

「謝らないで。謝ることじゃないよ。仲間なんだから、当たり前だろ」

「仁さん、本当にありがとうございます。わがままを通してすみません」

「龍、今朝言った通り、少なからず反応はあるだろうから」

「はい、覚悟してます」

「OK。それなら俺は、事務所の社長として仲間として、最大限サポートするだけだ」

 けじめをつけると言う龍介さんに、何をするのか聞いてみるけれど、彼はただ微笑む。優しく、力強く、本当にキラキラとした眼差しで。

「大切なものを守るために、俺はやるべきことをやるだけ。メンバーもファンもみんなのことを信頼しているからこそ、できる。絶対に守るから、綾乃のことも、みんなのことも」

 龍介さんが何をするのかは、わからない。でも、その言葉は、今までで一番真っ直ぐにわたしの胸に届いた。