◇
クリスマスの定番ソングが流れると、メンバーがステージから降りて、観客の前の通路を走り回る。赤い袋がメンバーの手元から宙を舞い、客席に落ちていく。どんどん大きくなる歓声に地面が揺れだす。
「RYU!」
彼の名前が一帯で叫ばれて、彼が近づいてきたことを知らせた。白い袋を持って、その中から赤い袋を取り出しては観客に向けて投げる。その度に、声にならないような歓声が起こっていた。
少しずつ近づいて来る彼の姿をただ目で追う。目の前に彼がいる。彼の名前を呼ぶ声は喉元まで込みあがってきて、止まってしまう。
「りゅ……」
彼はわたしの目の前を通り過ぎる瞬間、袋の中からわたしに一つ手渡した。反射的に出した両手の上には、黒い帽子。一瞬の出来事は、なにが起きたのか分からない程、すぐに過ぎ去っていった。
「綾乃さん! RYUが! 帽子! 帽子ですよ!」
フロントにはNY、そしてつばの裏側にはカラフルなNEW YORKの刺繍。龍介さんの家に置いていて、そのまま別れてしまったから、もうそれを手にすることはないと思っていた、黒帽子。
「帽子の中にサインが! サイン! え……」
栞ちゃんが指さす先、帽子の裏側に微かに白い文字が見える。照明を頼りにその文字をよく見ると『Legacy RYU』のサインと共に一言だけ。
『 会いたい 』
会いたいのは、わたし。
あなたの姿を見て、手が届かない人だと思うのに、それでも会いたくて触れたくて、その声で呼んでほしくて、願わずにいられない。あの時と同じように、一瞬のうちに涙が溢れて零れ落ちる。
「綾乃さん、大丈夫ですか?」
「……うん」
「その意味、あとで聞きますからね! 今は楽しみましょう!」
アンコールの終わりとともに、会場全体が拍手の音に包まれる。今まで聞いたことのない歓声と拍手の音の波。
クリスマスの定番ソングが流れると、メンバーがステージから降りて、観客の前の通路を走り回る。赤い袋がメンバーの手元から宙を舞い、客席に落ちていく。どんどん大きくなる歓声に地面が揺れだす。
「RYU!」
彼の名前が一帯で叫ばれて、彼が近づいてきたことを知らせた。白い袋を持って、その中から赤い袋を取り出しては観客に向けて投げる。その度に、声にならないような歓声が起こっていた。
少しずつ近づいて来る彼の姿をただ目で追う。目の前に彼がいる。彼の名前を呼ぶ声は喉元まで込みあがってきて、止まってしまう。
「りゅ……」
彼はわたしの目の前を通り過ぎる瞬間、袋の中からわたしに一つ手渡した。反射的に出した両手の上には、黒い帽子。一瞬の出来事は、なにが起きたのか分からない程、すぐに過ぎ去っていった。
「綾乃さん! RYUが! 帽子! 帽子ですよ!」
フロントにはNY、そしてつばの裏側にはカラフルなNEW YORKの刺繍。龍介さんの家に置いていて、そのまま別れてしまったから、もうそれを手にすることはないと思っていた、黒帽子。
「帽子の中にサインが! サイン! え……」
栞ちゃんが指さす先、帽子の裏側に微かに白い文字が見える。照明を頼りにその文字をよく見ると『Legacy RYU』のサインと共に一言だけ。
『 会いたい 』
会いたいのは、わたし。
あなたの姿を見て、手が届かない人だと思うのに、それでも会いたくて触れたくて、その声で呼んでほしくて、願わずにいられない。あの時と同じように、一瞬のうちに涙が溢れて零れ落ちる。
「綾乃さん、大丈夫ですか?」
「……うん」
「その意味、あとで聞きますからね! 今は楽しみましょう!」
アンコールの終わりとともに、会場全体が拍手の音に包まれる。今まで聞いたことのない歓声と拍手の音の波。


