シンデレラ・スキャンダル



 目の前のサブステージの先端に、ピアノと共に龍介さんが登場する。ハワイで見た龍介さんの姿がよみがえる。彼は一曲披露すると、近くに置いていたペットボトルの水を口にして小さく息を吐く。

「今年もオフを使ってハワイに行ってきました。そこでいつもどおり仲間と……優斗や徹たちと一緒に過ごしまして」

 彼が語るハワイでの思い出話に、笑い声や歓声が起こる。仲間と一緒にゆったりとした時間を過ごしたこと、バーベキューをしたこと、ピアノやギターを弾いていたこと、買い物に出かけたこと、みんなでお酒を飲んで酔っ払ったこと。

 彼の優しい声で語られる思い出は、ただただ美しく温かい。

「中々思うように歌えなかったり、曲を作れなかったりして行き詰っていたのですが、今回のハワイでの出会いは僕に光を与えてくれました。幸せだなと思うことが本当にたくさんあって、本当に素敵な尊い時間で……そして、ハワイで一つ、曲を作ったので、それを皆さんに聞いて頂きたいと思います」

 先ほどよりも更に大きな歓声が起こり、彼が微笑む姿が大きなスクリーンに映し出される。

「それでは、聴いてください」

 ピアノを弾くために前かがみになった彼の胸元で、キラリと光るものが見えた。スクリーンに大写しになったその二連の輝きに、息を呑む。小さな指輪のついた、あのネックレス。

 わたしが守りきれなかった証を、彼はまだ身につけてくれている。溢れ出した涙でスクリーンが滲んでいく。

「My Cinderella Girl」

 あの時と同じ言葉で、彼がゆっくりとピアノを奏で始める。ハワイで何度も聴いた曲は、あの日々が現実のものだと言ってくれているような気がする。