再び会場が暗闇に包まれると、大型モニターに光の滴が落ち、輝きを増していく。いつの間にか、その中央に人の姿が現れて、大きな歓声が沸き起こる。
そして、次の瞬間、ハワイで何度も聴いた歌声が伸びやかに響いた。それはわたしの胸を震わせて、体を熱くさせる。モニターを見つめる瞳に涙が溢れて、そのまま零れ落ちていく。
嬉しいのか、悲しいのか、切ないのか、自分でも心の行方がわからない。ただ、静かに想いが溢れて零れ落ちていく。その意味を追いかけることもできずに、ただ耳を傾ける。
ツインボーカルが奏でる美しい旋律。ほかのメンバーがその歌を彩るように舞う。メインステージは遠すぎて、彼の姿をとらえることはできない。でも、その奥の画面には何度も彼の姿が映し出される。
ハワイの日々とは違う、サングラスをかけた姿。小麦色の肌とツーブロックの金色の髪、白いシャツから覗く黒いタトゥー。彼の話す姿も歌う姿も、そして白い歯が光る笑顔も全てが恋しい。あのステージに本物の彼がいる。
「やだ、綾乃さんも泣いているじゃないですか」
「本当だね……」
顔を見合わせたわたしたちは、お互いの止まらない涙を見て、笑いあった。
そして、ライブが一時間経ったころ、衣装替えをしたメンバーが再びメインステージに現れ、次の瞬間、歌の途中で全員がサブステージに向かって走り出した。一気に会場の熱が高まったことがわかる。
「来たー!」
栞ちゃんが嬉しそうに飛び跳ねてフラッグを振る。彼らはステージ全体に広がっていき、踊り出す。わたしたちの目の前にもメンバーがいる。その近さに驚いて声がでない。顔がはっきりと見えるのだ。
メンバーが縦横無尽に駆け回っていく中で、わたしはただ彼の姿を探していた。光り輝くステージの上で、誰よりも目立つ衣装とサングラス。彼が歌いながら、少しずつこちらに進んでくる。
もう一人のボーカルの優くんと肩を組み、時には手を振り、笑顔を振りまいてゆっくりと歩いて、そして、とうとう目の前に現れた。彼がスタンド席に向かって手を振れば、大きな歓声が沸き起こる。それに応えるように彼は弾けるように笑う。
歓声に包まれて、多くのスポットライトを浴びる彼は間違いなく音楽界のトップを走るLegacyのボーカル、RYU。わたしの視線は、彼の姿を追いかけていく。その一挙手一投足を瞳に焼き付けていく。
わたしの後ろから、いくつもの手が彼に向かって伸ばされる。届くのではないかと思わせるこの距離の近さは、なんと罪深いのだろう。わたしは手を伸ばす事のないように、前にある鉄の棒をしっかりと掴んだ。
唇を噛み締め、一度目を伏せて、再び彼の姿を追いかけよう目を開く。その瞬間、周りから音が消えた。目の前には、龍介さん。顔がこちらに向けられたまま、まるで時間が止まったかのように見つめ合う。
「龍介さん……」
客席にいるわたしに気付くはずがない。何万人といるファンの中から、わたしを見つけるはずがない。それでもサングラスの下の彼の瞳と見つめ合っている気がしてしまう。
しばらくすると、優くんが龍介さんの傍に来て肩を抱いて、違う方向へ移動してしまった。「RYUこっち見てたね」と同じエリアにいるファンが嬉しそうに話す。わたしもみんなと同じ。龍介さんが、わたしを見てくれたと思っている。でも、その後、龍介さんと目が合うと感じることは一度もなかった。
そして、次の瞬間、ハワイで何度も聴いた歌声が伸びやかに響いた。それはわたしの胸を震わせて、体を熱くさせる。モニターを見つめる瞳に涙が溢れて、そのまま零れ落ちていく。
嬉しいのか、悲しいのか、切ないのか、自分でも心の行方がわからない。ただ、静かに想いが溢れて零れ落ちていく。その意味を追いかけることもできずに、ただ耳を傾ける。
ツインボーカルが奏でる美しい旋律。ほかのメンバーがその歌を彩るように舞う。メインステージは遠すぎて、彼の姿をとらえることはできない。でも、その奥の画面には何度も彼の姿が映し出される。
ハワイの日々とは違う、サングラスをかけた姿。小麦色の肌とツーブロックの金色の髪、白いシャツから覗く黒いタトゥー。彼の話す姿も歌う姿も、そして白い歯が光る笑顔も全てが恋しい。あのステージに本物の彼がいる。
「やだ、綾乃さんも泣いているじゃないですか」
「本当だね……」
顔を見合わせたわたしたちは、お互いの止まらない涙を見て、笑いあった。
そして、ライブが一時間経ったころ、衣装替えをしたメンバーが再びメインステージに現れ、次の瞬間、歌の途中で全員がサブステージに向かって走り出した。一気に会場の熱が高まったことがわかる。
「来たー!」
栞ちゃんが嬉しそうに飛び跳ねてフラッグを振る。彼らはステージ全体に広がっていき、踊り出す。わたしたちの目の前にもメンバーがいる。その近さに驚いて声がでない。顔がはっきりと見えるのだ。
メンバーが縦横無尽に駆け回っていく中で、わたしはただ彼の姿を探していた。光り輝くステージの上で、誰よりも目立つ衣装とサングラス。彼が歌いながら、少しずつこちらに進んでくる。
もう一人のボーカルの優くんと肩を組み、時には手を振り、笑顔を振りまいてゆっくりと歩いて、そして、とうとう目の前に現れた。彼がスタンド席に向かって手を振れば、大きな歓声が沸き起こる。それに応えるように彼は弾けるように笑う。
歓声に包まれて、多くのスポットライトを浴びる彼は間違いなく音楽界のトップを走るLegacyのボーカル、RYU。わたしの視線は、彼の姿を追いかけていく。その一挙手一投足を瞳に焼き付けていく。
わたしの後ろから、いくつもの手が彼に向かって伸ばされる。届くのではないかと思わせるこの距離の近さは、なんと罪深いのだろう。わたしは手を伸ばす事のないように、前にある鉄の棒をしっかりと掴んだ。
唇を噛み締め、一度目を伏せて、再び彼の姿を追いかけよう目を開く。その瞬間、周りから音が消えた。目の前には、龍介さん。顔がこちらに向けられたまま、まるで時間が止まったかのように見つめ合う。
「龍介さん……」
客席にいるわたしに気付くはずがない。何万人といるファンの中から、わたしを見つけるはずがない。それでもサングラスの下の彼の瞳と見つめ合っている気がしてしまう。
しばらくすると、優くんが龍介さんの傍に来て肩を抱いて、違う方向へ移動してしまった。「RYUこっち見てたね」と同じエリアにいるファンが嬉しそうに話す。わたしもみんなと同じ。龍介さんが、わたしを見てくれたと思っている。でも、その後、龍介さんと目が合うと感じることは一度もなかった。


