シンデレラ・スキャンダル



 開演時間十分前、ようやく会場に向かう。会場近くには坊主頭にサングラスをかけた人がたくさんいて、その熱気に圧倒されそうになる。

 龍介さんが招待すると言ってくれていた、クリスマスのライブ。ライブが終わったら、二人で誕生日をお祝いしようと彼は笑ってくれた。大切な思い出。思い出にしなければいけない日々。高鳴ることのないように、わたしは手を胸にあててゆっくりと列を進んでいく。部活の大会で行っていたときの幕張メッセとは全く違う。


 勝手を知る栞ちゃんについていくようにして、たどり着いた席。それを見て、今、わたしは言葉を失っている。アリーナ席とは一階に作られた席という意味だったらしい。わたしが考えていた、一番後ろの席とは違うようだ。

 わたしたちの後ろは少し間があいて、上にまた席が続いている。栞ちゃんがいうには、そこはスタンドというらしい。わたしが考えていたのは、スタンドの一番後ろの席。

「栞ちゃん、あの、結構近い席なんだね」

「ですよね? 一緒に盛り上がれますよ」

 嬉しそうな栞ちゃんの姿は可愛いけれど、目の前にある通路のようなステージに心臓が音を立てる。メインステージとは別に、アリーナの中央に細長い通路のようなステージが一直線に伸びている。わたしたちの席は、そのアリーナ中央に配置されたサブステージのすぐ隣にあった。ここに彼が来たらと思うと、少し怖い。

 栞ちゃんに無理やり持たされたフラッグと呼ばれるものを見つめていると、照明が少しずつ落ちていく。あらゆるところから歓声が上がり始めた。隣にいる栞ちゃんも、周りにいる人たちもフラッグを振って嬉しそうに笑っている。

 そして会場が完全に真っ暗になり、アリーナステージの中央部分に照明が当てられた。その先には、白いピアノと白いドレスを着た女性。静まり返る会場に、バイオリンの高らかな優しい音色が響く。

 その演奏が終わると、今度はメインステージ奥の巨大なモニターに様々な映像が映し出されていく。ステージ上には、サーカスかと見紛うようなキャストたちが行きかい舞っている。暗い照明の中で微かに映し出されるそれは幻想的で、鼓動を速めるから、少しだけ息苦しい。

 それはきっと、龍介さんに会うのが怖いから。龍介さんに会いたいのに、怖い。忘れられない人を見て、また恋い焦がれる日々が続いてしまうかもしれない。逃げ出したい。でも、会いたい。声が聴きたい。色々な感情が渦巻いて、張り裂けそうな程に心臓が音を鳴らす。