シンデレラ・スキャンダル

◇◇◇◇

 父を亡くしたあの日と同じように、また父と歩いたあの日とも同じように、夕陽が傾いて、目の前の海をオレンジ色に染める。眩しいほどに輝く、その水面。こうして、海を見た時に、悲しみや寂しさだけじゃなくなったのは、あのハワイの日々から。龍介さんと過ごした日から。

 初めて出会った、飛行機の中。柔らかく細められた、優しい瞳。わたしを守ってくれた、力強い腕。何度も引き寄せられた、温かい胸。


 龍介さんに出会って、恋は落ちるものだと知った。そして、幸せも、愛も夢も本当はすぐ傍にあって、それは温かくて尊くて眩しいものなのだと知ったの。龍介さんと過ごした日々が、輝いている。ハワイで過ごした日々も、日本で過ごした日々も。

 夢だったのかと思うほどに眩いその恋を、わたしは忘れない。たとえもう会えなくても、もう触れることができなくても。傍にはいられないけれど、龍介さんが夢を叶え続けることを、輝き続けることを、ただ祈ろう。

 ここに来れば、いつでも龍介さんを想うことができる。龍介さんが幸せになれるように、祈ることができるから。


 沈む夕陽。ぼんやりと光る水平線。遠くに揺らめくヨット。
 オレンジ色に染められて、眩しいほどに煌めく水面。

 潮の香り。波の音。頬をなでる風。ここは、検見川の浜。


 挫けそうになったら、検見川の浜に来ればいい。いつだって、ここから見る夕陽は美しいから。前を向こう。前を向けば、少しはわたしも変わることができる。