「どういう……」
「綾乃のお兄さん、やっと見つかったんだよ。お兄さんのことは、綾乃になにかしてあげられたらと思って、ずっと探してたんだ」
調査報告書に書かれた兄の情報を目で追う。調査開始日は、四年前にさかのぼる。千葉から東京、神奈川、名古屋、大阪に行き、最後に愛媛に行き着いたと書かれている。
「綾乃のことを何も知らないんだろ、あいつ。綾乃の見た目と雰囲気に騙されて、お嬢様だとでも思ってるんじゃないの? 綾乃はとんだ食わせ物だよ」
卓也がわたしから調査報告書を取り上げて、二枚、三枚とめくり、ある箇所で手を止めた。
「松嶋俊則はホストクラブKに勤めていた。そして……薬物に手を出し、現在は重度の依存症となっている」
「嘘よ! お兄ちゃんがそんなこと」
「俺が報告書の改ざんなんてこと、すると思うか? 綾乃の気持ちはわかるけど、綾乃が知っているお兄さんは十年以上前の彼だろう?」
呆然とするわたしの視線の先、テーブルの上に置かれていた龍介さんとわたしの写真にその調査報告書が並べられ、コンコンとテーブルが叩かれる。卓也がなにを言いたいのか、嫌でもわかる。
「綾乃、どうする?」
問いかけの声が静かに響いた。
「お兄さんのこと、助けてあげたいだろ? 俺なら助けてあげられる。今よりも専門性の高い、もっといい病院も用意してあげるよ。情報が一切外に漏れないように隔離しよう」
「おにい、ちゃ……」
「それに、すべてが公けになったら誰が一番被害を受けると思う?」
顔が勝手に上がった。跳ねるようにして。目の前の男の顔が、どこまでも優しげに歪む。
「RYUだっけ……あいつ自身のスキャンダルなんて、今までなかったみたいだな。憶測記事ばかりで。色々なことを考えて、行動一つひとつに気を付けてきたんだろう。真面目で努力家だって、業界でも評判らしいよ」
そんなの当たり前のこと。龍介さんがどれだけ、どれだけ細やかに、慎重に、全てを捧げながら生きているのか、わたしが間近で見ているもの。
「でも、これで終わり。Legacy RYUの恋人発覚、恋人の兄は重度の薬物依存」
「っ……」
「綾乃次第だよ。綾乃が俺を選ぶなら、お兄さんのことも、Legacyのことも守れるよ。それとも、これを業界各所に流す? 一時期、彼自身が薬物に手を染めているって飛ばし記事がでたらしいし、現実味が増すってところかな」
「龍介さんは、そんな人じゃない」
「そうかもしれないね。でも、世間は事実がどうかなんて興味はないんだよ。そう報道されてしまえば、そういうイメージがつくんだ。薬物なんて……彼が今まで築き上げてきたものがすべて壊れちゃうね」
なんて愉しそうに笑うのだろう。優しげで、気遣わしげに笑うその奥で、残酷な愉悦が隠されもせずに揺らめくように光っている。
「綾乃のお兄さん、やっと見つかったんだよ。お兄さんのことは、綾乃になにかしてあげられたらと思って、ずっと探してたんだ」
調査報告書に書かれた兄の情報を目で追う。調査開始日は、四年前にさかのぼる。千葉から東京、神奈川、名古屋、大阪に行き、最後に愛媛に行き着いたと書かれている。
「綾乃のことを何も知らないんだろ、あいつ。綾乃の見た目と雰囲気に騙されて、お嬢様だとでも思ってるんじゃないの? 綾乃はとんだ食わせ物だよ」
卓也がわたしから調査報告書を取り上げて、二枚、三枚とめくり、ある箇所で手を止めた。
「松嶋俊則はホストクラブKに勤めていた。そして……薬物に手を出し、現在は重度の依存症となっている」
「嘘よ! お兄ちゃんがそんなこと」
「俺が報告書の改ざんなんてこと、すると思うか? 綾乃の気持ちはわかるけど、綾乃が知っているお兄さんは十年以上前の彼だろう?」
呆然とするわたしの視線の先、テーブルの上に置かれていた龍介さんとわたしの写真にその調査報告書が並べられ、コンコンとテーブルが叩かれる。卓也がなにを言いたいのか、嫌でもわかる。
「綾乃、どうする?」
問いかけの声が静かに響いた。
「お兄さんのこと、助けてあげたいだろ? 俺なら助けてあげられる。今よりも専門性の高い、もっといい病院も用意してあげるよ。情報が一切外に漏れないように隔離しよう」
「おにい、ちゃ……」
「それに、すべてが公けになったら誰が一番被害を受けると思う?」
顔が勝手に上がった。跳ねるようにして。目の前の男の顔が、どこまでも優しげに歪む。
「RYUだっけ……あいつ自身のスキャンダルなんて、今までなかったみたいだな。憶測記事ばかりで。色々なことを考えて、行動一つひとつに気を付けてきたんだろう。真面目で努力家だって、業界でも評判らしいよ」
そんなの当たり前のこと。龍介さんがどれだけ、どれだけ細やかに、慎重に、全てを捧げながら生きているのか、わたしが間近で見ているもの。
「でも、これで終わり。Legacy RYUの恋人発覚、恋人の兄は重度の薬物依存」
「っ……」
「綾乃次第だよ。綾乃が俺を選ぶなら、お兄さんのことも、Legacyのことも守れるよ。それとも、これを業界各所に流す? 一時期、彼自身が薬物に手を染めているって飛ばし記事がでたらしいし、現実味が増すってところかな」
「龍介さんは、そんな人じゃない」
「そうかもしれないね。でも、世間は事実がどうかなんて興味はないんだよ。そう報道されてしまえば、そういうイメージがつくんだ。薬物なんて……彼が今まで築き上げてきたものがすべて壊れちゃうね」
なんて愉しそうに笑うのだろう。優しげで、気遣わしげに笑うその奥で、残酷な愉悦が隠されもせずに揺らめくように光っている。


