神様は誰?

――12月24日。クリスマスイブ、19時12分。

私は自分の部屋で、数学のワークを開いていた。

一問も解けていなかった。

スマホは机の端に置いていた。
なるべく見ないようにしていた。

でも、通知音が鳴った。

神様の声。

私は、息を止めて画面を開いた。

【神様の声 @kamisama_no_koe_000】

匿名相談:

『あの人は嘘をついています。
みんな知らないだけです。
見せたいんです。本当の顔を。
どうすれば、罪は返せますか。』

神様は、どう答えるべきですか。

□ 赦す
□ 離れる
□ 晒す
□ 返す
□ 裁く

投票終了まで:30分

19:12
返信 3 拡散 4 いいね 11

手が冷たくなった。

文章は、匿名化されていた。
名前はなかった。
水瀬律という名前は消えていた。
余計な部分も削られていた。

でも、あの相談だった。

水瀬律の相談だった。

グループチャットが一気に動いた。

早川慧『誰が開いた』

加賀陸『俺じゃない』

篠原新『嘘だろ』

望月杏『これ、律さんの』

早川慧『陸、閉じろ』

加賀陸『閉じてる。今閉じようとしてる。でも管理画面に出ない』

早川慧『どういう意味だ』

加賀陸『投票一覧にない。投稿は出てるのに、内部の投票一覧に表示されてない』

私は息ができなくなった。

神様の口が、私たちの手の届かないところで開いている。

投票の数字が増えた。

【外部投票 #不明/途中経過】

赦す:6%
離れる:9%
晒す:21%
返す:18%
裁く:46%

裁く。

その文字だけが、画面の中で黒く見えた。

返信欄も増えていく。

『裁く一択』

『嘘つきは見せたほうがいい』

『本当の顔って何』

『返すって好き』

『晒すより裁くのほうが神様っぽい』

『神様、今日は逃げないで』

私はスマホを握ったまま、動けなかった。

誰が投票を開いたのか、分からない。

陸なのか。
咲なのか。
オラクルなのか。
仕組みなのか。
外部投票なのか。
それとも、私たちが作ってしまった神様そのものなのか。

本物の神様なんていない。

分かっている。

分かっているのに、画面の白い面は、もう私たちの口ではなかった。

【途中経過】

裁く:51%

数字が伸びる。

私は、声に出さずに言った。

止まって。

でも、神様は聞かなかった。