神様は誰?

通知音のあと、私はすぐには返事をしなかった。

篠原新の言葉が、画面の中で光っている。

篠原新『これ、面白くない?』

面白い。

その言葉は、たしかに合っていた。

合っていたから、嫌だった。

私はベッドの上で膝を抱えたまま、スマホを見ていた。部屋の電気はつけっぱなしで、カーテンの隙間からは夜の黒が細く入っていた。机の上には開きっぱなしの英語のワークがあり、解いていない問題が私を責めるみたいに並んでいる。

でも、その日いちばん私を責めていたのは、教科書でも母の声でもなかった。

『当たってました』

相談者の後輩が送ってきた、その一文だった。

私たちは、何も当てていない。

その子の名前も知らない。友達の顔も知らない。好きな人がどんな人かも知らない。どんな声で笑うのかも、どんなことで傷つくのかも、何も知らない。

何も知らないまま、怖いほうを選びなさい、と書いた。

そして、その子は自分の中の怖さを選んだ。

それだけのこと。

それだけのことなのに、画面の中では、もう意味ができていた。

早川慧『面白いで済ませるな』

篠原新『いや、ちゃんとすごいって意味』

早川慧『すごいでもない』

加賀陸『でも結果的にうまくいったじゃん』

早川慧『結果論』

望月杏『でも、後輩から私宛にも『ありがとうございます。あのアカウントに相談して良かったです』ってメッセージ来たよ』

そこで、チャットが止まった。

止まった、というより、全員が同じところで黙ったのだと思う。

ありがとう。

その言葉は、ずるかった。

悪ふざけだったと言い切るには、あまりにもまっすぐだった。誰かが少し楽になったのなら、これは悪いことではないのかもしれない。そう思わせる力があった。