――その夜、問題の相談が来た。
【懺悔室/#539】
呼び名:なし
年齢:16
『友達が、私を裏切りました。
でも、その子はみんなに好かれています。
私はその子の秘密を知っています。
言えば、その子は終わると思います。
私はそれを言いたくありません。
でも、言わないと、その子だけが何も失わないのが許せません。
神様、私は赦すべきですか。
それとも、同じ痛みを返すべきですか。』
杏が最初にそれを貼った。
「これ、危ないと思う」
慧はすぐに答えた。
「投稿に使うな。返信も慎重に」
その数分後、オラクルからDMが来た。
【オラクル/DM】
『今夜の返信欄は、赦しでは止まりません。
あの相談者は、赦しではなく罰を望んでいます。』
私は、画面を見たまま固まった。
あの相談者。
どの相談者のことを言っているのか。
私たちには分かった。
分かってしまった。
でも、オラクルが分かるはずはない。
#539は、まだ投稿していない。
外部投票にも出していない。
返信欄にも書いていない。
杏が青ざめた。
「なんで分かるの?」
新は無理に笑おうとした。
「いや、こういう相談多いからでしょ。一般論じゃない?」
陸もすぐに言った。
「投稿の反応から推測したんじゃない? 最近ずっと罰系が増えてるし。『あの相談者』って、特定じゃなくて、そういうタイプの相談者って意味かも」
慧は画面を睨んでいた。
「都合よく解釈するな」
「じゃあ何だよ。不正アクセスって言いたいのか?」
「可能性の話をしてる」
「証拠ないだろ」
「証拠が出てからじゃ遅いって何度言えばいいんだ」
二人の声が少しずつ大きくなる。
私は、また「声、落として」と言いそうになった。
でも、言わなかった。
代わりに、咲を見た。
咲は何も言わなかった。
スマホの画面を見ている。
オラクルの一文を見ている。
表情は薄い。
でも、目だけが動いていた。
「咲」
私が呼ぶと、咲は顔を上げた。
「どう思う?」
咲は少しだけ間を置いた。
「分からない」
それだけだった。
咲が分からないと言うとき、本当に分からないのか、分かっていて言わないのか、私には分からない。
その分からなさも、怖かった。
【懺悔室/#539】
呼び名:なし
年齢:16
『友達が、私を裏切りました。
でも、その子はみんなに好かれています。
私はその子の秘密を知っています。
言えば、その子は終わると思います。
私はそれを言いたくありません。
でも、言わないと、その子だけが何も失わないのが許せません。
神様、私は赦すべきですか。
それとも、同じ痛みを返すべきですか。』
杏が最初にそれを貼った。
「これ、危ないと思う」
慧はすぐに答えた。
「投稿に使うな。返信も慎重に」
その数分後、オラクルからDMが来た。
【オラクル/DM】
『今夜の返信欄は、赦しでは止まりません。
あの相談者は、赦しではなく罰を望んでいます。』
私は、画面を見たまま固まった。
あの相談者。
どの相談者のことを言っているのか。
私たちには分かった。
分かってしまった。
でも、オラクルが分かるはずはない。
#539は、まだ投稿していない。
外部投票にも出していない。
返信欄にも書いていない。
杏が青ざめた。
「なんで分かるの?」
新は無理に笑おうとした。
「いや、こういう相談多いからでしょ。一般論じゃない?」
陸もすぐに言った。
「投稿の反応から推測したんじゃない? 最近ずっと罰系が増えてるし。『あの相談者』って、特定じゃなくて、そういうタイプの相談者って意味かも」
慧は画面を睨んでいた。
「都合よく解釈するな」
「じゃあ何だよ。不正アクセスって言いたいのか?」
「可能性の話をしてる」
「証拠ないだろ」
「証拠が出てからじゃ遅いって何度言えばいいんだ」
二人の声が少しずつ大きくなる。
私は、また「声、落として」と言いそうになった。
でも、言わなかった。
代わりに、咲を見た。
咲は何も言わなかった。
スマホの画面を見ている。
オラクルの一文を見ている。
表情は薄い。
でも、目だけが動いていた。
「咲」
私が呼ぶと、咲は顔を上げた。
「どう思う?」
咲は少しだけ間を置いた。
「分からない」
それだけだった。
咲が分からないと言うとき、本当に分からないのか、分かっていて言わないのか、私には分からない。
その分からなさも、怖かった。



