神様は誰?

――オラクルは、信者管理も提案した。

信者、という言葉は、私たちがなるべく使わないようにしていた言葉だった。
でも、オラクルはためらわなかった。

【オラクル/信者反応分類】

A:閲覧者
投稿を見るだけ。拡散なし。

B:反応者
いいね、返信、引用を行う。

C:懺悔者
DM・懺悔室・返信欄で自己開示する。

D:供物者
ギフトコード、画像、白面素材等を送る。

E:神託引用者
「神様が言った」を理由に行動する。

F:代行者
神様の言葉をまとめ、広げ、他者へ伝える。

注意:
EとFが重なると、神様の声は運営外で増殖します。

新がそれを読んで、口笛を吹いた。

「代行者って、オラクル本人じゃん」

陸は画面を見ながら言った。

「自分も分類してるんだろ。すごいな」

慧は低い声で言った。

「すごいじゃない。怖いよ」

杏は、Fのところを見ていた。

「神様の言葉をまとめてくれる人がいると、助かる部分もあると思ってた」

「助かる?」

慧が聞く。

杏は頷いた。

「だって、私たちが全部見なくても、返信欄の流れとか、どの言葉が危ないかとか、分かるなら……」

言いながら、杏の声は小さくなった。

自分でも分かっているのだと思った。
助かるという言葉が、危ないことに。

陸は、オラクルと技術的な話を始めた。

【神様の声/DM】

『公開返信欄の集計、手作業ですか?』

『半分は手作業です。
残りは検索語と時間帯で拾っています。
「晒せ」「罰」「神様が言った」「供え物」「見てください」など。
返信の増え方を見ると、次に荒れる言葉が分かります。』

『フォーム側の相談も分類できたら便利なんですけど、内部情報は渡せないので』

『内部に触れる必要はありません。
分類項目だけ合わせれば、外の熱と内の相談を比較できます。』

陸の指が速くなっていた。

「それ、できるかも」

それ、できるかも。

彼は嬉しそうだった。
新しい仕組みを見つけた時の顔だった。

怖がっているのに、楽しそう。
楽しそうなのに、怖がっている。

陸はいつも、その二つが同じ場所にある。

慧が言った。

「陸。そこまでにしろ」

陸は画面から目を離さない。

「内部情報は渡してない」

「渡す渡さないじゃない。近づきすぎてる」

「じゃあ、どうすんだよ」

陸の声が少し荒くなった。

「このまま未対応を増やして、また誰かが『神様が黙った』って暴れるのを待つのか?」

「暴れるって言わないで」

杏が小さく言った。

陸はすぐに黙った。

杏の声は責めているわけではなかった。
でも、その言葉で、テーブルの上の温度が下がった。

暴れる。
信者。
分類。
危険度。
拡散感度。

人の痛みが、どんどん管理しやすい言葉になっていく。

管理しやすくなるほど、私たちは読まなくても分かった気になる。

それが怖かった。