神様は誰?

――オラクルは、すぐに役に立った。

それがいちばん困った。

翌朝には、公開返信欄の分類を送ってきた。

【オラクル/返信欄分析】

対象投稿:
『神様は言う――沈黙は共犯である』

返信総数:2,413
引用:1,102
主な反応:

一、共感型
「見てるだけも悪い」
「黙ってた自分に刺さった」

二、攻撃正当化型
「晒せ」
「分からせろ」
「罰を受けるべき」

三、自己罰型
「私も共犯です」
「神様、私を罰してください」

四、神格化型
「神様は全部見ている」
「神様は間違えない」

五、運営批判型
「告知で逃げた」
「神様と運営がズレている」

推奨:
次回投稿では、攻撃正当化型を切り離す必要があります。
ただし、強く否定すると神様の弱体化として読まれます。
神様の文体を維持したまま、攻撃を否定してください。

候補:
『神様は言う――罪を見ることと、罪を増やすことを同じ祈りにしてはいけない』

私は、その候補を読んだ瞬間、息が止まった。

神様っぽい。

誰かがそう言う前に、私の中でその言葉が浮かんだ。

私が書いたわけではない。
私が整えたわけでもない。
私の指は、一文字も打っていない。

なのに、それは神様の言葉に見えた。

私の言葉を、誰かが先に言っている。

それが、嫌だった。
ひどく嫌だった。

「これ、使えるじゃん」

新が言った。

悪気はなかったと思う。
でも、その言葉で胸の奥がぎゅっと縮んだ。

使える。

私の中の何かが、素材にされたみたいだった。

杏は候補を見て、小さく頷いた。

「攻撃を止めてる。いいと思う」

陸も言った。

「文体も寄せてる。かなり精度高い」

精度。

私は思わず顔を上げた。

「精度って何」

声が少し強かった。

陸は驚いたように私を見る。

「いや、神様の文体に近いって意味」

「近いって」

「澪が怒ることじゃなくない?」

そう言われて、私は言葉を失った。

怒ることじゃない。
そうかもしれない。

神様の声は、私個人のアカウントではない。
みんなで作った。
みんなで決めた。
私は整えただけ。

整えただけなら、他の人が整えてもいいはずだ。

それなのに、苦しかった。

自分の言葉を奪われた気がした。
私がずっと責任から逃げるために「整えただけ」と言ってきたくせに、いざ他の誰かが整えたら、私は取られたと思っている。

矛盾している。

その矛盾が、喉に詰まった。

咲は私を見ていた。

見ているだけだった。

それが一番、嫌だった。