神様は誰?

――でも、次の日から投票の空気は変わった。

相談が少し重くなるだけで、選ばれる言葉も変わる。

【外部投票 #104】

匿名相談:
『友達に嘘をつかれました。
本人はまだ私が気づいていないと思っています。
私は知っています。
でも、言ったら関係が壊れます。
神様は、どう答えるべきですか。』

選択肢:
□ 赦す
□ 待つ
□ 晒す
□ 離れる
□ 罰する

【途中経過】

赦す:9%
待つ:16%
晒す:28%
離れる:22%
罰する:25%

「晒すと罰する、伸びてる」

陸が言った。

声には、少し興奮が混じっていた。

「やっぱり強い選択肢は票が集まるな」

慧が睨む。

「分析するな」

「分析しないと危ないだろ」

陸は返した。

「数字で見ないと、どこが危ないか分からない」

咲は画面を見ていた。

「晒すを押す人は、返信欄にも書く」

「何を?」

新が聞く。

咲は、スマホをこちらに見せた。

【返信欄】

『嘘つきには分からせたほうがいい』

『黙ってると相手が調子乗る』

『晒すはやりすぎだけど気持ちは分かる』

『罰するって言葉、強くて好き』

『神様、今日こそ裁いて』

裁いて。

その言葉に、杏が顔をしかめた。

「裁くって、嫌だ」

咲は静かに言った。

「でも、楽しそう」

杏が咲を見る。

「楽しそうって」

「返信が」

咲は淡々と言う。

「赦すを選んだ人は、あまり書かない。待つを選んだ人も静か。晒すと罰するを押した人は、理由を書きたがる。自分が正しいって、誰かに見てほしがる」

投票結果は、最終的にこうなった。

【投票結果 #104】

赦す:8%
待つ:14%
晒す:31%
離れる:21%
罰する:26%

晒すが一位だった。

慧はすぐに言った。

「採用しない」

新が画面を見る。

「でも、投票結果は晒すだよ」

「だから?」

「神様の声をみんなで聞くって言ったじゃん」

「聞くのと、そのまま従うのは違う」

慧の声は低い。

陸が口を挟んだ。

「結果を無視すると、投票の意味がなくなる」

「意味がなくなっていい」

慧は言った。

「危ない結果なら止める」

杏は小さく言った。

「でも、この相談者、たぶん嘘をつかれて苦しいんだよね」

「だからって晒していいわけじゃない」

「うん。晒すじゃなくて、嘘を見なかったことにしない、くらいなら」

杏の言葉に、私は反応してしまった。

見なかったことにしない。

それは、神様の文体にしやすかった。

私はスマホを開いた。

晒す。
罰する。
離れる。
待つ。

強い票を、そのまま強く出さない。
でも、票の熱を消しすぎない。

それが私の仕事だった。

『神様は言う――知った傷を、知らないふりで眠らせてはいけない』