神様は誰?

――最初に使われた供え物は、500円のドリンクチケットだった。

本当に、そんな小さなものだった。

ファミレスのテーブルで、陸が言った。

「今日、22時からまとめ作業するなら、飲み物いるだろ」

慧はすぐに顔を上げた。

「まさか使う気か」

「期限が今日までなんだよ」

「だから?」

「使わないで失効させても、それはそれで相手の気持ちを捨てるみたいじゃん」

陸の言葉は苦しかった。

でも、完全な嘘ではなかった。
送った人は、神様に飲んでほしいと書いていた。
使わないことも、使うことも、どちらも意味になってしまう。

新がスマホを覗いた。

「カフェラテだって。神様、眠気覚まし」

「篠原、やめろ」

慧が言う。

杏が小さく言った。

「使ったら、ちゃんと記録しよう」

慧が杏を見た。

「杏まで」

「違う」

杏の目は赤かった。

「私だって嫌だよ。でも、もう送られてきてる。返しても返しても来る。使わないって返しても、『届いたならいいです』って言われる。だったら、せめて何をしたか、嘘つかずに残したい」

嘘つかずに残す。

それは、正しいことのように聞こえた。