神様は誰?

――その日の放課後、ファミレスにはいつもの六人席があった。

でも、テーブルはもう六人分では足りなかった。

陸のノートパソコン。
慧のメモ帳。
杏のスマホ。
新のパフェ。
咲の水。
私のスマホ。

そのほかに、見えないものが増えていた。

三万人の視線。
78件の未対応DM。
白い面をスマホに挟んだ生徒。
黒板に残ったチョークの跡。
「神様に見てもらえたら救われる」という冗談。

全部が、テーブルに乗っている。

新は、パフェのスプーンをくわえたまま言った。

「有名になったんだよ、神様」

軽すぎる声だった。
でも、新の目は少し光っていた。

「有名って言うな」

慧が言う。

「じゃあ何? 認知?」

「ふざけるな」

「ふざけてないって。いや、ちょっとふざけてるけど」

新はスマホを見せた。

【返信欄】

『神様の言葉まとめ作ってほしい』

『過去の神託一覧ほしい』

『白い面の画像、保存しました』

『#神様は見ている』

『信者になりそう』

信者。

その言葉を見た瞬間、私は喉が乾いた。

「信者って」

杏がつぶやいた。

「言い方、嫌だね」

「でも向こうが言ってる」

新が言った。

「俺らが言わせたわけじゃない」

その言い方に、私は少しだけひっかかった。

陸がノートパソコンを開いた。

「まとめられてる」

画面には、別のアカウントの投稿が表示されていた。

ユーザー名は、片仮名でこう書かれていた。

オラクル。

アイコンは、黒い背景に小さな白い点。
説明欄には、短く、

神様の言葉を聞く者

とあった。

【オラクル @oracle_listen】

『神様の声 過去神託まとめ』

一、迷っているなら、いちばん怖いほうを選びなさい
二、理由を知らないまま傷つくことを、優しさとは呼びません
三、離れることは、裏切りではありません
四、嘘は、隠した日数だけ重くなる
五、赤いものを隠した人は、もう隠せない
六、神様は見ている

※個人の記録用です。削除依頼があれば消します。

「早」

陸が感心したように言った。

「誰これ」

新が画面を覗き込む。

「ファン?」

「まとめ垢だろ」

慧の声は硬かった。

「関わるな」

「関わってないじゃん」

新が言う。

「向こうが勝手にまとめてるだけ」

向こうが勝手に。

それも便利な言葉だった。

咲はオラクルの投稿をじっと見ていた。

「聞く者」

「何?」

私が聞くと、咲は説明欄を指した。

「神様の言葉を聞く者」

「それが?」

「神様って、聞く人がいないと神様にならないんだね」

咲はそう言って、水を飲んだ。