その夜、神様は眠らなかった。
正確に言えば、眠れなかったのは私で、神様はただ画面の中で白い顔をしていただけだった。
『神様は見ている』
その投稿は、夜の底で何度も見られた。
見られた、という数字が増える。
押された、という数字が増える。
広げられた、という数字が増える。
それなのに、投稿した私は、自分の部屋のベッドの上で膝を抱えたまま、何もしていなかった。
何もしていないのに、増えていく。
それがいちばん怖かった。
【神様の声/通知ログ】
22:08
『神様は見ている』投稿
22:16
返信 18 拡散 47 いいね 103
22:43
フォロワー 218
23:12
フォロワー 406
23:58
フォロワー 721
00:31
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加賀陸『四桁』
六人のグループチャットに、陸がそれだけ送ってきた。
たった二文字だった。
でも、画面の向こうで陸が笑っているのが分かった。
声を出しているかは分からない。机に向かって、ノートパソコンを開いて、たぶん前のめりになっている。
指先だけが忙しく動いている。
篠原新『神様、覚醒したじゃん』
早川慧『喜ぶな』
篠原新『いや、喜ぶとかじゃなくて事実』
早川慧『その事実が危ないって言ってる』
桐谷咲『知らない人が、神様を知ってる』
その一文を見た瞬間、私はスマホを少し離した。
知らない人が、神様を知ってる。
それは、変な言い方だった。
でも、正しかった。
神様なんていない。
いるのは、私たち六人と、白い面のアイコンと、私が整えた短い言葉だけ。
なのに、知らない人が神様を知っている。
知らない人が、神様に見られている気になっている。
【神様の声/返信欄】
『神様こわいけど好き』
『私も見てほしい』
『見てください。誰にも言えません』
『見られたいって思った時点で終わってる?』
『神様、私のこと見てますか』
似たような言葉が、何度も並んでいた。
見て。
見てください。
私を見て。
見られたい。
見られるのが怖い。
でも見てほしい。
画面の中で、知らない人たちが同じ方向に手を伸ばしているみたいだった。
私は反射的に画面を伏せた。
でも、伏せたスマホは鳴った。
短く、何度も。
神様は、伏せても見ている。
そんな馬鹿みたいなことを思って、私は自分が嫌になった。
正確に言えば、眠れなかったのは私で、神様はただ画面の中で白い顔をしていただけだった。
『神様は見ている』
その投稿は、夜の底で何度も見られた。
見られた、という数字が増える。
押された、という数字が増える。
広げられた、という数字が増える。
それなのに、投稿した私は、自分の部屋のベッドの上で膝を抱えたまま、何もしていなかった。
何もしていないのに、増えていく。
それがいちばん怖かった。
【神様の声/通知ログ】
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加賀陸『四桁』
六人のグループチャットに、陸がそれだけ送ってきた。
たった二文字だった。
でも、画面の向こうで陸が笑っているのが分かった。
声を出しているかは分からない。机に向かって、ノートパソコンを開いて、たぶん前のめりになっている。
指先だけが忙しく動いている。
篠原新『神様、覚醒したじゃん』
早川慧『喜ぶな』
篠原新『いや、喜ぶとかじゃなくて事実』
早川慧『その事実が危ないって言ってる』
桐谷咲『知らない人が、神様を知ってる』
その一文を見た瞬間、私はスマホを少し離した。
知らない人が、神様を知ってる。
それは、変な言い方だった。
でも、正しかった。
神様なんていない。
いるのは、私たち六人と、白い面のアイコンと、私が整えた短い言葉だけ。
なのに、知らない人が神様を知っている。
知らない人が、神様に見られている気になっている。
【神様の声/返信欄】
『神様こわいけど好き』
『私も見てほしい』
『見てください。誰にも言えません』
『見られたいって思った時点で終わってる?』
『神様、私のこと見てますか』
似たような言葉が、何度も並んでいた。
見て。
見てください。
私を見て。
見られたい。
見られるのが怖い。
でも見てほしい。
画面の中で、知らない人たちが同じ方向に手を伸ばしているみたいだった。
私は反射的に画面を伏せた。
でも、伏せたスマホは鳴った。
短く、何度も。
神様は、伏せても見ている。
そんな馬鹿みたいなことを思って、私は自分が嫌になった。



