神様は誰?

その夜、神様は眠らなかった。

正確に言えば、眠れなかったのは私で、神様はただ画面の中で白い顔をしていただけだった。

『神様は見ている』

その投稿は、夜の底で何度も見られた。

見られた、という数字が増える。
押された、という数字が増える。
広げられた、という数字が増える。

それなのに、投稿した私は、自分の部屋のベッドの上で膝を抱えたまま、何もしていなかった。

何もしていないのに、増えていく。

それがいちばん怖かった。

【神様の声/通知ログ】

22:08
『神様は見ている』投稿

22:16
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22:43
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加賀陸『四桁』

六人のグループチャットに、陸がそれだけ送ってきた。

たった二文字だった。

でも、画面の向こうで陸が笑っているのが分かった。
声を出しているかは分からない。机に向かって、ノートパソコンを開いて、たぶん前のめりになっている。
指先だけが忙しく動いている。

篠原新『神様、覚醒したじゃん』

早川慧『喜ぶな』

篠原新『いや、喜ぶとかじゃなくて事実』

早川慧『その事実が危ないって言ってる』

桐谷咲『知らない人が、神様を知ってる』

その一文を見た瞬間、私はスマホを少し離した。

知らない人が、神様を知ってる。

それは、変な言い方だった。
でも、正しかった。

神様なんていない。
いるのは、私たち六人と、白い面のアイコンと、私が整えた短い言葉だけ。

なのに、知らない人が神様を知っている。

知らない人が、神様に見られている気になっている。

【神様の声/返信欄】

『神様こわいけど好き』

『私も見てほしい』

『見てください。誰にも言えません』

『見られたいって思った時点で終わってる?』

『神様、私のこと見てますか』

似たような言葉が、何度も並んでいた。

見て。
見てください。
私を見て。
見られたい。
見られるのが怖い。
でも見てほしい。

画面の中で、知らない人たちが同じ方向に手を伸ばしているみたいだった。

私は反射的に画面を伏せた。

でも、伏せたスマホは鳴った。

短く、何度も。

神様は、伏せても見ている。

そんな馬鹿みたいなことを思って、私は自分が嫌になった。