――それから数日、懺悔室は、相談より早く増えた。
DMは、返事を求める。
懺悔室は、ただ誰かに聞いてほしいだけの人が送れる。
その違いは大きかった。
人は、答えがほしい時より、ただ聞いてほしい時のほうが多いのかもしれない。
【懺悔室/送信ログ抜粋】
#012
『友達のテストの点を、みんなに言いました。笑わせたかっただけです。』
#014
『部活の後輩の失敗を、先生にチクりました。心配してるふりをしました。』
#019
『好きな人に近づくために、その人の友達と仲良くしました。本当はその子のこと、どうでもいいです。』
#021
『既読をつけないで、相手が焦るのを見るのが好きです。最低です。』
#024
『あの子が嫌われている理由を、私だけが知っています。言いません。言ったら私も終わります。』
秘密は、秘密だけで終わらなかった。
誰かの秘密には、必ず別の誰かがいた。
傷つけた相手。
疑われている相手。
何も知らずに笑っている相手。
画面の中には出てこないのに、確かにそこにいる相手。
私たちは、その相手の許可を取っていない。
相談を受けていない。
名前も知らない。
でも、知ってしまった。
私たちは、知らない人たちの関係を、片側だけから覗いていた。
杏は、毎回泣きそうになった。
「この子たち、自分が悪いって分かってるんだよ。分かってるから、ここに書いてるんだよ」
慧は言った。
「分かってるなら、俺たちが裁く必要はない」
「裁いてない」
新が言う。
「神様は裁いてない。言葉を出してるだけ」
「それを裁きって言うんだよ」
慧の声が強くなった。
教室の後ろの方にいた生徒たちが、ちらっとこちらを見る。
私は反射的に肩をすくめた。
いつもなら、ここで笑いに変える。
声を落として、空気を戻す。
私はその役だった。
でも、その日はうまく言葉が出なかった。
咲が言った。
「裁かれたい人もいる」
慧が咲を見る。
「それは、こっちが裁いていい理由にならない」
「理由じゃない」
咲は淡々と言った。
「観察結果」
その言葉に、陸が少しだけ眉をひそめた。
「咲のそれ、たまに怖い」
「うん」
咲は頷いた。
「私も怖い」
自分で怖いと言える人を、どこまで怖がればいいのか分からなかった。
DMは、返事を求める。
懺悔室は、ただ誰かに聞いてほしいだけの人が送れる。
その違いは大きかった。
人は、答えがほしい時より、ただ聞いてほしい時のほうが多いのかもしれない。
【懺悔室/送信ログ抜粋】
#012
『友達のテストの点を、みんなに言いました。笑わせたかっただけです。』
#014
『部活の後輩の失敗を、先生にチクりました。心配してるふりをしました。』
#019
『好きな人に近づくために、その人の友達と仲良くしました。本当はその子のこと、どうでもいいです。』
#021
『既読をつけないで、相手が焦るのを見るのが好きです。最低です。』
#024
『あの子が嫌われている理由を、私だけが知っています。言いません。言ったら私も終わります。』
秘密は、秘密だけで終わらなかった。
誰かの秘密には、必ず別の誰かがいた。
傷つけた相手。
疑われている相手。
何も知らずに笑っている相手。
画面の中には出てこないのに、確かにそこにいる相手。
私たちは、その相手の許可を取っていない。
相談を受けていない。
名前も知らない。
でも、知ってしまった。
私たちは、知らない人たちの関係を、片側だけから覗いていた。
杏は、毎回泣きそうになった。
「この子たち、自分が悪いって分かってるんだよ。分かってるから、ここに書いてるんだよ」
慧は言った。
「分かってるなら、俺たちが裁く必要はない」
「裁いてない」
新が言う。
「神様は裁いてない。言葉を出してるだけ」
「それを裁きって言うんだよ」
慧の声が強くなった。
教室の後ろの方にいた生徒たちが、ちらっとこちらを見る。
私は反射的に肩をすくめた。
いつもなら、ここで笑いに変える。
声を落として、空気を戻す。
私はその役だった。
でも、その日はうまく言葉が出なかった。
咲が言った。
「裁かれたい人もいる」
慧が咲を見る。
「それは、こっちが裁いていい理由にならない」
「理由じゃない」
咲は淡々と言った。
「観察結果」
その言葉に、陸が少しだけ眉をひそめた。
「咲のそれ、たまに怖い」
「うん」
咲は頷いた。
「私も怖い」
自分で怖いと言える人を、どこまで怖がればいいのか分からなかった。



