神様は誰?

――放課後になる前に、DMは7件増えた。

昼休み、六人のグループチャットに陸が数字だけを貼った。

加賀陸『未対応DM 19』

篠原新『神様、繁盛してる』

早川慧『言い方』

望月杏『19件? 昨日の夜は5件だったよね』

加賀陸『通知が埋もれる。今のままだと無理』

桐谷咲『神様、既読無視するんだ』

篠原新『神様も忙しいんです』

早川慧『ふざけるな』

スマホの画面の向こうで、いつものやりとりが続いている。

私はそれを見ながら、食べかけの購買のパンを袋に戻した。
甘いクリームの味が、急に気持ち悪くなった。

未対応。

その言葉は、仕事みたいだった。
いや、仕事のほうがまだ分かりやすい。仕事なら、誰かに頼まれて、誰かに給料をもらって、誰かに責任を取らされる。

私たちは違う。

頼まれていない。
頼まれているけれど、頼まれていないことにしたい。
お金はもらっていない。
だから責任もないことにしたい。

なのに、未対応という言葉だけが、私たちの中に入り込んでいた。

杏からスクリーンショットが届いた。

【神様の声/DM】

『友達に「大丈夫?」って聞かれるのが嫌です。大丈夫じゃないって言ったら困らせるし、大丈夫って言ったら嘘になります。どうしたらいいですか』

『親にスマホを見られました。消したはずのトークも見られていました。もう家に帰りたくないです』

『誰にも言えないことがあります。言ったら嫌われます。でも、黙っていたら私が私じゃなくなりそうです』

【六人のグループチャット】

望月杏『全部読むだけで苦しい』

篠原新『杏、無理すんなよ』

望月杏『でも読まないと、この人たち、誰にも言えないんだよ』

早川慧『だからこそ、俺たちが受けるべきじゃないものもある』

加賀陸『受けるべきじゃないものを分ける仕組みがいる』

篠原新『仕組み神、出番』

加賀陸『まじめに言ってる』

仕組み。

陸のその言葉に、私は少しだけ安心してしまった。

感情が重い時、仕組みは逃げ道になる。
線を引けば、線の内側だけを見ればいい気がする。
分類すれば、分類名のほうが本体みたいに見えてくる。

涙。
罪悪感。
嘘。
裏切り。
恐怖。

それらを、相談種別にできる。

できると思った瞬間、たぶんもう危なかった。