ノベライズ版「祝祭村からの脱出」にまつわる記録

 私が夜子の失踪について本格的に気が付いたのは、『祝祭村の脱出』のイベントから一週間が経った頃だった。夜子は、仕事に集中すると二、三日連絡を返さないなんてことはざらで、交際を始めたころはともかく、最近は連絡を頻繁に交わさないことも多くなっていた。 夜子は東京に住んでいるが、私は地方住まいということもあり、互いの生活リズムを尊重していたつもりだった。

 そんな私の平穏を破ったのは、夜子の両親からの電話だった。

「夜子と連絡が取れないんだけど、景くん、何か知らない?」

 受話器越しの母親の声は震えていた。夜子が実家に予定していた連絡を欠かし、数日が過ぎているという。嫌な予感が背筋を走った。 私はすぐに夜子の携帯に電話をかけたが、呼び出し音は空しく鳴り続けるだけで、やがて無機質な留守番電話のアナウンスに切り替わった。LINEを送っても、既読がつく気配はない。

 それからは、なりふり構わず動いた。 共通の知人たちに片っ端から連絡を入れ、彼女の行方を知らないか尋ね回った。普段、詮索をするようで避けていた彼女のSNSもチェックした。しかし、そこにあるのはイベントへの期待を綴った投稿を最後に、プツリと途絶えた空白の時間だけだった。

 最後の手がかりは、彼女が失踪の直前に参加した、あの『祝祭村からの脱出』だ。 あの忌まわしい火災が起きた夜、あの村で一体何が起きたのか。 夜子は、何を目撃し、どこへ消えたのか。

 私は、夜子の行方を追うことと並行して『祝祭村の脱出』についても情報を集めることにした。これが、夜子の行方へ繋がっていると、そんな妙な予感がしていた。

 しかし、そこで知ったのは『祝祭村の脱出』では、的井夜子の失踪だけでなく、とんでもない事件が起きてしまったという事実だった。