夜子
「祝夜」は――あなただったんですね
謎の男
私は……どうでしょう。それよりも、ノベライズ版は楽しんでいただけましたか?
夜子
ごまかさないでください。あのノベライズも、どうして私の視点で物語が進んでいるんですか? 車で現地へ行ったのは私だけです。他にも参加者はいたのに、どうして私の視点なんですか? 私が来るまで現地へ行くことを知っていたとでもいうんですか?
謎の男
……夜子さん、どこまで気づいているんですか?
夜子
「祝夜」のことですか?
そうですね、「祝夜」は実在しないゴーストライターのようなものだということ――複数人の共同ペンネーム、と言ってもいいかもしれない。そして、その一人が結城唯さん、よね
謎の男
はい、その通りです
夜子
そして、「祝夜」の中のひとりが兎見月さん、あなたですよね
謎の男(兎見月)
……それは、どうなんでしょうか
夜子
違うの?
兎見月
……夜子さん、「没入」って、なんだと思いますか?
夜子
……そうね。現実との境目が分からなくなるくらい、意識が集中する感覚のこと、よね
兎見月
最近、本当に没入していますか?
夜子
……
兎見月
人間というのは不思議で、最初は夢中になっていた体験にも、次第に慣れてしまうんです。どんな刺激にだって慣れてしまうんです。どんなすごい刺激だって、何度も何度も受ければ慣れてしまう。人間は痛みにだって慣れてしまう生き物だって、よく言うでしょう
夜子
何が言いたいんですか?
兎見月
没入も同じことです。はじめて体験型の遊びに参加した時の興奮こそがマックスで、そこから参加者は徐々に慣れていってしまうんです。そうして、もっとすごい刺激を求めて、しかしもっとすごい刺激を受けても没入できない。
夜子
分からない、とは言わないけれど……
兎見月
私たちは「終わらない没入」を求めてしまう。現実と虚構の区別がつかなくなるほどの痛み、恐怖。祝夜が本当に作りたかったものは、そうしたものなんです
夜子
……
兎見月
夜子さん、あなたならわかるでしょう。没入と銘打ったコンテンツが飽和して、あっという間に飽きられてしまっている現状を。一瞬の没入から、すぐに現実に戻って、また次の体験に移動する。そんな時代に、本当に物語に没入させ続けるためにはどうすればいいのか。
夜子
現実を、物語に巻き込んでいく……
兎見月
そうです。すべてがイルミナティに続くと信じる陰謀論者のように、ありとあらゆる現実を飲み込んで肥大し続ける、それこそが「終わらない没入」なんです。祝祭村は、それを目標に設計された。日本中を燃やし続けるまで鎮火しない炎上のように
夜子
……でも、結城さんのことは
兎見月
さあ。何が真実なのかは私にもわかりません。しかし、結城唯は物語の中で死にました。それだけは事実です
夜子
エンノ舎の人たちは……
兎見月
さあ、どこまで祝夜の考えを知っていたのかはわかりません。でも、彼らだって体験型エンターテインメントを仕事にしているんです。祝夜の考えに共感する部分があったのではないでしょうか。
夜子
……
兎見月
夜子さん。これはゲームではないし、現実でもないんです。僕たちは、その境目にいるんです。
夜子
……
兎見月
夜子さん。あなたも、祝夜になりませんか?
音声はここで不自然に途切れている
「祝夜」は――あなただったんですね
謎の男
私は……どうでしょう。それよりも、ノベライズ版は楽しんでいただけましたか?
夜子
ごまかさないでください。あのノベライズも、どうして私の視点で物語が進んでいるんですか? 車で現地へ行ったのは私だけです。他にも参加者はいたのに、どうして私の視点なんですか? 私が来るまで現地へ行くことを知っていたとでもいうんですか?
謎の男
……夜子さん、どこまで気づいているんですか?
夜子
「祝夜」のことですか?
そうですね、「祝夜」は実在しないゴーストライターのようなものだということ――複数人の共同ペンネーム、と言ってもいいかもしれない。そして、その一人が結城唯さん、よね
謎の男
はい、その通りです
夜子
そして、「祝夜」の中のひとりが兎見月さん、あなたですよね
謎の男(兎見月)
……それは、どうなんでしょうか
夜子
違うの?
兎見月
……夜子さん、「没入」って、なんだと思いますか?
夜子
……そうね。現実との境目が分からなくなるくらい、意識が集中する感覚のこと、よね
兎見月
最近、本当に没入していますか?
夜子
……
兎見月
人間というのは不思議で、最初は夢中になっていた体験にも、次第に慣れてしまうんです。どんな刺激にだって慣れてしまうんです。どんなすごい刺激だって、何度も何度も受ければ慣れてしまう。人間は痛みにだって慣れてしまう生き物だって、よく言うでしょう
夜子
何が言いたいんですか?
兎見月
没入も同じことです。はじめて体験型の遊びに参加した時の興奮こそがマックスで、そこから参加者は徐々に慣れていってしまうんです。そうして、もっとすごい刺激を求めて、しかしもっとすごい刺激を受けても没入できない。
夜子
分からない、とは言わないけれど……
兎見月
私たちは「終わらない没入」を求めてしまう。現実と虚構の区別がつかなくなるほどの痛み、恐怖。祝夜が本当に作りたかったものは、そうしたものなんです
夜子
……
兎見月
夜子さん、あなたならわかるでしょう。没入と銘打ったコンテンツが飽和して、あっという間に飽きられてしまっている現状を。一瞬の没入から、すぐに現実に戻って、また次の体験に移動する。そんな時代に、本当に物語に没入させ続けるためにはどうすればいいのか。
夜子
現実を、物語に巻き込んでいく……
兎見月
そうです。すべてがイルミナティに続くと信じる陰謀論者のように、ありとあらゆる現実を飲み込んで肥大し続ける、それこそが「終わらない没入」なんです。祝祭村は、それを目標に設計された。日本中を燃やし続けるまで鎮火しない炎上のように
夜子
……でも、結城さんのことは
兎見月
さあ。何が真実なのかは私にもわかりません。しかし、結城唯は物語の中で死にました。それだけは事実です
夜子
エンノ舎の人たちは……
兎見月
さあ、どこまで祝夜の考えを知っていたのかはわかりません。でも、彼らだって体験型エンターテインメントを仕事にしているんです。祝夜の考えに共感する部分があったのではないでしょうか。
夜子
……
兎見月
夜子さん。これはゲームではないし、現実でもないんです。僕たちは、その境目にいるんです。
夜子
……
兎見月
夜子さん。あなたも、祝夜になりませんか?
音声はここで不自然に途切れている



